九十九神

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九十九神

 外の世界の住人。人間が幻想郷に流れ着く様に、人ならざる存在も幻想郷に流れ着く事もある。神霊の類もいれば妖怪の類、更には異形の存在であろうと関係なく、幻想郷はそれら全てを受け入れる。日野 修市という外の世界の人間が地霊殿の住人、古明地 さとりに保護されるよりも前、幻想郷に地上にて、人ならざる存在、今回は妖怪の類が新たに幻想入りしたようだ。  長い年月を経て道具に神霊や精霊、霊魂が宿り生まれたとされる妖怪。人は彼女達の存在を『付喪神』、もしくは『九十九神』と呼ぶ。 「さて、こうして皆が無事に幻想入りを果たした事は喜ばしいの一言に尽きる」  妖怪の山の麓近く、木々の生い茂る空間を切り開き、それなりの広さのある屋敷を構え、無事に幻想入りを果たした九十九神の面々が、開口一番に口を開いた少女の言葉に安堵の息を漏らす。 「だが、我々の目的は幻想郷に流れ着き、そこで安寧の生活を送る事ではない。それは、此処に集まった者達ならば当然理解していると私はそう思っている」  民族衣装に身を包んだ九十九神、水梨 時琶は、屋敷に集まった九十九神達を一瞥した後、隣に控える少女に視線を向け、一歩前に踏み込んだ。 「これより我々は、幻想郷に流れ着いた外来人達の調査及び監視を開始する。一人一人虱潰しに、何時、何処で、どの様な形で幻想入りしたか。彼等若しくは彼女達の名字、名前、性別、年齢、職業……特に、幻想入りを果たした事で何らかの能力を得たかにかけてまで、全て全て調べ上げるのだ。そして……」  そしてと、ゆっくりと両手を広げ、そのまま勢いよく手を叩いた。 「然る後に処理する」  その行為の意味、そしてその言葉の意味に理解したある者はゴクリと息を飲み、またある者はニヤリと笑みを浮かべる等、様々な反応を示した。唯一人、時琶の隣に座した少女を除いては。 「その為には、出来得る限り目立った行動を控える必要がある。相手方に此方の事がばれてしまったら元も子もないのでね」  九十九神の彼女達が幻想入りした事は妖怪の賢者 八雲 紫以外に知り得ない情報である。正確には、紫の式である八雲 藍は彼女達が幻想入りをしている事を知っているが、彼女の口から九十九神のメンバーが幻想入りした事が口外される事は無いだろう。何故なら、彼女達を幻想郷に招き入れたのは、妖怪の賢者、八雲 紫の意志であり、彼女の指示に従い、秘密裏に彼女達を幻想郷に招き入れたのだから。
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