九十九神

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「故に、我々の活動にあたっての必須事項を示そう。一つ、外来人に関わる案件は些細な情報であろうと共有する事。二つ、監視中の外来人に感づかれた、若しくは普段とは異なる行動をし、それに違和感を感じた場合、即座に任務を中断し情報を持ち帰る事。最悪帰還が不可能と判断した場合は、各人に行動を委ねる」  委ねるとは、最悪の場合、此方の情報を相手に気取られる前に自分自身の不手際を自身の命を以って償えと言っている様なものだ。その言葉に、学ラン姿の九十九神の少女がごくりと唾を飲み込み、男物の着物を羽織った九十九神の少女はこくりと頷いた。 「まぁ、功を焦り、深追いしなければ最悪の結果を齎す事は無いだろう。藪蛇は御免こうむりたいからな。だが、危険と判断すれば拠点であるこの屋敷に帰還するのではなく、暫しの間身を隠し、此方からの指示を待て。と、此処までで何か質問はあるか?」 「うむ、では質問なのじゃが」  と、質問を投げ掛けるや否や、時琶の話を静観していた九十九神の一人、旅人の井出達をした少女が手を挙げた。 「外来人の監視、その上で何処までが許容範囲か、それを確認したい」 「それは外来人から接触があった場合という事か」 「如何にも。監視中や監視外の者からの接触、此処では攻撃的な対応をされた場合と捉えてもらっても構わぬが、その場合、何処までの対応が許容範囲か分からねば上手く立ち回る事が出来ぬ故、明確な判断基準を設けて頂きたい」  旅人風の井出達をした少女、種島(たねしま) 火野衣(ひのえ)は、その手に握られた得物を優しく撫で、暗にこれを使用して良いか。その有無を問い掛ける。  基本的に外来人は幻想郷において妖怪の贄となる為に外の世界から連れてこられた存在。しかし、人里に保護された外来人だけは例外。それは幻想郷を創り出した妖怪の賢者、八雲 紫が定めたルールである。だが仮に、外来人の方から手を出してきた場合の判断を何処まで定めるか、それを明確にしたいのだ。  いや、きっと火野衣の場合は、判断基準を明確にしたいのではなく、正当防衛を理由に行動して良いのかという、やや好戦的な一面を兼ねているのだが、そこは敢えて突っ込まず、やや苦笑交じりに答えた。 「此方から手を出すのは拙いのだが……そうだな、外来人の方から仕掛けてきた場合は幻想郷のルールに従った上での正当防衛で対応してくれ。出来る限り事を大きくして目立つ行為は避けて欲しいからな」
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