九十九神

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 そこまで説明し、今回の監視の任務で火野衣を人里に向かわせるべきか考えを巡らせる。偵察任務や隠密行動において、如何に秘密裏に行動し情報を持ち帰るかが肝となる。火野衣の能力は他の九十九神と比べると有能だが、依り代となっている物が物なだけに好戦的な性格が任務に支障を来すかもしれない。  そこまで考えを巡らせた後、チラリと視線を隣に座する少女へと向ける。時琶と同じ様に民族衣装を身に纏った少女。他の九十九神と比べると見た目がやや幼く、華奢な身体付きをした少女は、時琶の視線に気付いたのかニコリと笑みを浮かべながら小さく頷いた。  貴女の判断に任せます。口を挟まない事からそう言う意味なのだろうと判断した時琶は、今度は迷いなく新たな方針を書き換えた。 「我々の戦力は限られている。だが、監視の対象は何も人里だけにいるとは限らない。故に、火野衣には幻想郷のルールに縛られた人里ではなく地底、忌み嫌われた妖怪達の集う旧都で任務を遂行して欲しい。そこでなら、多少の厄介事も許容の範囲となるだろう」 「ふむ、旧都か」 「本来人間とは妖怪の糧となる存在。しかし、旧都でも妖怪と共存して生活を送っている人間……外来人がいてもおかしくは無い。火野衣の風貌も、地上の妖怪が物見がてらに地底に降り立ったと説明すれば辻褄があう。ならば適任は火野衣以外にいない。人里に関しては他の者に一任したいと思っている」  人里でのトラブルは厳禁だが、地底の旧都なら問題ないだろう。一癖も二癖も強い妖怪達が集う地底だが、火野衣の実力を考えれば多少のトラブル程度であれば柔軟に対処できる筈。後は、人里に送る人選だが、残ったメンバーの内、人里にいてもおかしくない井出達をした他のメンバーと自分自身が赴けば問題ないだろう。  そして最後に、隣に座する少女に関してだが、時琶は幾何か思案を浮かべたものの、結論は同じと判断すると、申し訳なさそうな表情を浮かべながら、皆にも分かる様に身体ごと少女に向けると、静かに口を開いた。 「そして、申し訳ないが姫様はこの屋敷で待機してもらう。姫様の事は既に相手方に知られています。人里で姫様の姿を誰かが目撃すれば、警戒される事は必須。ですのでどうか、ご理解ください」
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