九十九神

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 時琶の言葉に、少女は一瞬眉を顰めるも、直ぐに表情を戻し小さく頷く。他の九十九神のメンバーも時琶の方針に賛同しているのか、火野衣の問い以降、誰も質問を投げ掛ける者は無かった。少し間を開け、本当に誰も質問は無い事を確認した時琶は、小さく咳払いをすると、今後の方針を決定した上で話を終えようと皆に退室を促した。 「では、今後の方針に関しては以上とする。皆には今回の案件以外にも多くの問題が発生するだろう。だが、それら全てを解決し、無事に任務を全うする事を切に願う。では各自、任務の為に準備に取り掛かってくれ」  その言葉を最後に、今後の活動方針の擦り合わせを終了させると、それに合わせて一人、また一人と九十九神の少女達が退室していく。そして最後に、皆が退室するのを確認した時琶は、隣に座したままこれまでの話を静観していた少女に一礼すると、他の九十九神の少女達と同様に部屋から退室した。  深夜、他の九十九神の少女達が眠りにつき、静まり返った屋敷の縁側で、時琶は一人、一昔前に日本で使われた煙管で一息ついていた。しかし、時琶自身は煙管に口を付けず、刻みたばこの煙の香りを嗜む程度に留めている。刻みたばこが燃え尽きて煙が出なくなれば灰を落とし、また新たに刻みたばこを詰め込み火を付ける。その繰り返しだ。  同じ工程を幾度か繰り返す事数分、縁側に向かって近付いてくる足音が聞こえてきた。床の軋む音と歩幅だけで近付いてくる人物が何者か分かる。その人物が誰か分かったからこそ、時琶は未だ燃え残っている刻みたばこの火を消し、件の人物へと視線を向けた。  そこにいたのは、少し前まで時琶の隣に座していた少女。時琶に姫様と呼ばれていた少女、白鳳山(はくほうざん) 龍蓮(りゅうれん)である。話し合いの席では時琶と同様、民族衣装に身を纏っていた龍蓮だが、今は寝巻用の浴衣を身に纏っている。  互いに姿を視認すると、龍蓮はニコリと笑みを浮かべながら時琶の隣寄り添うように座り、時琶の手に握られた煙管に目を向けながら口を開いた。 「久しいですね。時琶がたばこを嗜むなんて。何時以来でしょうか?」 「……何時からだったかな? もう覚えていないよ」 「そうですか……私は覚えていますよ。時琶がたばこを嗜んでいた時の事を。時琶がたばこを嗜む時は何時だって無理をしている時です」
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