地上へ

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「はい、お空は愛称ですね。彼女の他にもお燐、火焔猫 燐の事を私達はお燐と呼んでいます」  やはり愛称であったかと、そう思い、昨日地霊殿を出たクロも愛称ですかと問うと、さとりは思い出したようにくすりと笑い、肯定として頷いた。 「はい、クロというのも愛称なんです。彼女の本名は送那《おくりな》 クロエ。最初はクロエと呼んでいましたがお燐やお空のように愛称で呼んで欲しいとの事でしたのでクロと呼んでいます」  クロという愛称で初めて呼ばれた時、満面の笑みで尻尾をぶんぶん振っていたと昔の事を思い返すさとりに、修市も思わず笑みを浮かべる。そして、知らなかったとはいえ、クロの愛称を勝手に呼んでいた事にしまったと思った修市だったが、さとりは、元々愛称で呼んでいた自分がクロの本名を伝えなかった事が原因なので気にしないで下さいと言い、クロもまた、あまり気にしてないとの事だったので、地上から戻った後もクロと呼んでも問題ないとの事だ。  話の最中、さとりの視線が門の方角へと向けられる。視線の先には地霊殿に向かって飛んでくる一羽の鳥。正確には背中に翼を生やした少女が一人、さとり目掛けて一直線に飛んでくる。  最初は遠目で姿形が曖昧であったが、近付くにつれてその全容が明らかになる。白のブラウスに緑のスカート、ロングの黒髪に緑の大きなリボンを付けている。クロに尻尾と犬耳があったように、背中には鴉特有の黒い翼に上から白いマントを羽織っている。  更に接近するにつれ、動物と人間が混ざり合ったような外見とは他に、お空の腕や足に違和感を感じ、修市は思わず目を見開いた。右足と左足の構造が違う。正確には、右足の形が違うというべきだろうか、鉄の様な、像の足をモチーフにしたのであろう、左右で異なる見た目をしている。そして、最も特徴的なものが彼女の右腕である。肘から先が多角柱の長い棒で覆われている。  クロとは異なり、動物的な特徴以外にも他の特徴がみられる彼女に、さとりは両手を広げて迎え入れる準備をしている。と、そこで修市は気付く。勢いよく突っ込んでくるお空を迎え入れる準備をしているさとり。近付くにつれて良く分かるのだが、お空お体格はさとりよりも大きい。  更に、さとりの体格が華奢という事も相俟って、このままお空がさとり目掛けて突っ込んで来たら怪我では済まないのではないだろうか?
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