地上へ

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「古明地さん、危な……」  危ない。そう言いかけた修市だったが、それよりも速く、お空がさとり目掛けて突っ込んできた。 「さとり様、ただいまぁ!!」  久方振りにさとりに会えたのが嬉しかったのだろう。満面の笑みでさとりに抱き着いた彼女だったが、勢いを殺す事が出来ず、そのままさとりと共に遥か後方へと吹き飛ばされていく。 「こ、古明地さん!!」  鳥類が獲物を捕獲する時、恐らくこういう感じなのだろう。空を飛んでいる状態だった為、地面に叩き付けられることは無かったが、その衝撃は計り知れない。最悪、怪我を負っている可能性も考えたが、どうやら杞憂に終わったらしい。  振り返った先には、そのまま上空へと舞い上がり、さとりに頬擦りするお空の姿と、それを甘んじて受けるさとりの姿があった。見た所、怪我を負った様子もない。  動物の扱いに慣れているのか、それとも妖怪である彼女は、肉体が見た目と違って丈夫に出来ているのか、若しくはその両方か。兎に角無事で良かったと、そう思いながら、修市はさとりとお空が地上に降りるのをその場で待ち続けた。 「それでは、改めまして……」  お空の抱擁を受けていたさとりがコホンと一つ、咳払いをする。さとりの隣にお空が並び、修市と向かい合う形で立っている。 「この子が霊烏路 空です。私達はお空と呼んでいます。ほら、お空。此方の方は日野 修市さんです。ご挨拶して下さい」 「はい、さとり様。私は霊烏路 空。皆は私をお空って呼んでるよ。宜しくね修市」 「此方こそ初めまして、お空さん。僕は日野 修市と言います」  いきなり苗字ではなく名前の方で呼ばれたのは驚いたが、お空の場合、他のクロやお燐の様に名前の部分を愛称で呼び合っているからこそ、修市の事も名前で呼んだのかもしれない。もしくは、そこまで考えずの発言だったのかもしれないが、名前を言われた事に対して、不思議な事に不快な気持ちが全くなく、寧ろ、心地良いとすら思っている自分がいる。 「ところで修市」 「はい、何ですか?」  と、修市の事をじっと見つめた後、お空は修市とさとりを交互に見比べ、首を傾げる。 「修市は人間で、人間の修市はこの地霊殿にいるって事だよね?」 「はい、そうなります」
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