地上へ

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 恐らくさとりも、修市がクロから身を引いたのは背後の気配から察しただろう。その理由までは分からないだろうが。 「さとり様、ただいま戻りました!!」  犬の姿のクロが、さとりに駆け寄り、報告をする。内容を大まかに説明すると、以下の通りである。地上に上がったクロは、そのまま博麗神社に向かい、そこで博麗の巫女に会う事が出来た。そして、博麗の巫女にさとりから受け取った書状を渡すと、博麗の巫女はその中身を確認し、さとりが地上に上がる内容を承諾する。その中には無論、修市の事も含まれていたが、それに関しては、実際に修市にあった上で話をしたいとの事だった。  その後、博麗の巫女から了承を得たクロが地底に戻ろうとした時、その去り際に、今回の様な回りくどい事はしなくていいから、他の妖怪達と同様に地上に上がればいいじゃないかと話したらしい。他の妖怪の事も気になったが、恐らくはさとりのペットであるお燐やお空、後は妹であるこいしの事を言っているのだろう。地底の住民達が地上に上がる様に、地上の妖怪達も時折地底を訪れる機会も増えているという。  故に、かつての地上と地底の約束事も曖昧となった今、さとりの様に一々確認を取らなくても問題ないというのが、博麗の巫女の見解なのだと、修市は思った。そして、ふと思う。地上に上がれば、恐らく自分は外の世界に戻る事が出来るのだろう。  妖怪の賢者である八雲 紫の力によりこの幻想郷に流れ着いたのだとしたら、自分は妖怪の贄として連れてこられた事になる。しかし、どのような経緯があったか分からないが、自分はこうして地底に落とされ、そのまま地霊殿で保護された。  その後も、八雲 紫から何らかの接触があるのではないかと内心思ったが、どうやら杞憂に終わったのだろう。もしかしたら、かの妖怪の賢者もさとりの様に、地上と地底の約束事に関して生真面目な対応を取っている為、今の段階で接触がなかっただけで、地上に上がった途端、何らかの接触があるかもしれない。  その時、自分がどうなるか、そう考えただけで一瞬身震いした。地霊殿の主であるさとりに保護され、地上に上がり、博麗の巫女と会うまではその身を保証されているとはいえ、気を付けないといけない事だけは間違いないだろう。
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