博麗の巫女

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博麗の巫女

 クロとの遣り取りの後、場所は変わって地霊殿の庭から入口へと移る。 「お待たせしました。それでは地上に上がりましょう」  地上に上がる準備を終えたさとりは、先に地霊殿の入り口で待機していた修市とクロにそう告げると、修市と共に待機していたクロがさとりに近付き、話しかけた。 「さとり様、場所は地底の入り口近辺で宜しいでしょうか?」 「はい、そこでお願いします」 「分かりました。それでは準備をしますので、少しお待ち下さい」  そう言って、スッと目を閉じ、ブツブツと何かを呟きながら意識を集中させている。庭での遣り取りでクロが言っていた能力に関する事をしているのだろう。自分とさとりを地底の入り口まで送り届ける能力。  どのような形で地底の入り口まで送り届けるのか気になる修市だったが、集中しているクロの姿に、何をしているのか問うのは野暮というものだろう。さとりもクロの様子を静かに見守っている為、修市も、クロの準備が終わるその時まで待つ事にした。  そして、暫くブツブツと呟いていたクロの目がスッと開いた。 「よし、準備が出来ました。さとり様、そして日野、僕の手を繋いで下さい」  そう言って、手を差し出すクロに、さとりは何の迷いもなくその手を握り、修市も、少し前の遣り取りで慣れたのだろう、クロの手を握る事が出来た。 「それではさとり様、今から地底の入り口まで送り届けます。おい日野、お前も送るけど、目を瞑っていた方が良いぞ。僕の能力は始めの内は慣れてないと気分を悪くするかもしれないからな」  クロの言い分からすると、能力を発動した時、悪酔いするとの事だ。車か何かと同じという事だろうか?  曖昧な記憶ではあるが、三半規管が弱いと乗り物酔いしやすくなると言われているが、クロの能力は、それに近い状況になるというのだろうか? (まさか、クロの背中に乗って移動するのだろうか? それなら、さっきの遣り取りって意味があるのだろうか?)  そう思いながらも、クロの指示通り目を閉じると、クロが二人が目を閉じるのを確認したのだろう。小さな声で、良しと言うと、再びブツブツと何かを呟き、二人を握る手が一瞬強く握られた。そして……。 「おーい日野、到着したぞ。もう目を開けて良いぞ」 「……え?」  目を開けても良いと言うクロの言葉に、修市は閉じていた目をスッと開く。すると、先程まで地霊殿にいた筈の三人は、気が付けば全く見知らぬ洞窟の真ん中に立っていたのだ。
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