博麗の巫女

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 あまりにも突然の出来事に、修市の目が丸くなる。クロの言う通り、手を強く握られた瞬間、僅かだが妙な浮遊感は感じた。しかし、その感覚も本当に一瞬の出来事立った為、修市からすれば、単なる気のせいかと思われていた。  だが実際に、修市とさとり、そしてクロの三名は、地霊殿から遠く離れ、修市にとって見知らぬ洞窟まで移動していたのだ。唖然とする修市に、クロはふふんと笑みを浮かべ、自慢げに自身の能力を披露する。 「どうだ、びっくりしたか? これが僕の能力、送る程度の能力だ」  送る程度の能力。それは、自身が定めた対象を目的地まで送る能力である。言葉だけで説明すれば単に目的地まで案内する能力だと錯覚するだろう。しかし、クロの能力の場合、自身が定めた対象を目的地まで一瞬で案内する事が出来るという特殊な能力なのだ。  ただし、その能力も万能ではなく、条件が複数存在する。送り届ける相手に触れている事が前提条件である事、そして、閉鎖された空間、例えば地中や壁の中といった場所に相手を送り届ける事が出来ない事、更にクロが一度訪れた場所でなければ送り届ける事が出来ないなどのデメリットも存在する。  デメリットにさえ目を瞑れば移動する面において、クロの能力ほど使い勝手の良い能力はないと本人ですら自負する程に、クロの能力は特殊であった。その能力の性能に、修市は地霊殿でクロが楽しみにしておけと言っていた意味を理解する。  確かにこの能力は凄い。古来より、人は様々な方法で目的地まで早く移動する方法を画策してきた。  それが動物の力を借りる事であり、車や電車、飛行機といった機械に頼る等、人はそうして短時間での移動を可能にしてきた。  しかし、クロの能力は、今まで人間が創り上げてきた移動手段を凌駕する性能を秘めている事は間違いなかった。  鼻高々に自身の能力を披露する事に成功したクロに、さとりはクスクスと笑みを浮かべ、送り届けてくれたことに感謝の言葉を送る。 「此処まで送り届けてくれてありがとうございました。後は私が、日野さんを博麗神社まで案内します。クロは此処で待機していて下さい」 「分かりました。僕は此処で待機しています。さとり様、道中お気を付け下さい」 「はい、クロも、此処で待っている間、何かあったら博麗神社までご連絡下さい」 「了解です。お燐姉さんやこいし様から何か連絡があったら博麗神社まで報告に来ます」
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