博麗の巫女

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 修市もその提案には賛成らしく、改めてクロに会釈して気持ちを伝えると、さとりを先頭に地上に繋がる洞窟の入り口へと足を運んだ。クロの姿も大分小さくなり、それと入れ替わる様に、入り口が近付いたのか、地霊殿の灼熱地獄跡とは異なる明かりが修市の視界を包んでいく。何処か懐かしく、そして、灼熱地獄跡の熱感とは異なる暖かさに、修市は目を細め、それを凝視した。 「日野さん、もうすぐ地上に到着します。今は昼時ですので、太陽の光に気を付けてください。決して直接太陽の光を凝視しない様にしてください」  さとりの指摘は最もである。灼熱地獄跡の明かりがあったとはいえ、基本的に地霊殿は地底にあり、明かりと呼べるものが殆どない。故に、目が光に慣れていない状態で直接太陽を見たならば、目の組織が損傷を受け、視力が低下する、最悪の場合失明する可能性も否定できない。  そういう意味では、クロが地上に直接送るのではなく、地上に繋がる洞窟を中継して送り届けてくれた事は間違いではなかっただろう。少しずつ目を慣らしながら地上へと向かう。  そして、目が慣れた頃合いを見計らい、修市とさとりは地上へ上がった。地上に上がった修市の視界を、青々とした木々が埋め尽くす。どうやら此処は、林か森の中らしい。  辺りからは鳥や獣の鳴き声が聞こえ、見渡す先に獣道に近い道が一直線に伸びていた。恐らくこの獣道の先に、博麗神社があるのだろう。地底とは異なる景色に興味を示す修市を横目に、さとりもまた、地底に降りる以前の記憶を思い出したのか、太陽の光に目を細め、久方振りの暖かみを堪能している。 「気持ちいいですね。地底とは違って、此処はとても暖かい」  さとりの口から率直な感想が漏れ出る。さとりの言う様に、此処は地底と違い、温暖な気候に恵まれている。地底も灼熱地獄跡の影響で気温が低いという訳ではないのだが、やはり地獄の熱量と太陽から感じる熱量には大きな違いを感じずにはいられない。  そんな陽射しの中、さとりは修市に博麗神社までの道のりを説明する。やはり、獣道に近い山道を進んだ先に博麗神社があるようだ。  元々、参拝客様に用意されていた筈の山道だったが、利用する者が少なかった事と、博麗の巫女本人があまりこの道を使わなくなった為、雑草が生えっぱなしの状態になっているとの事だ。
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