博麗の巫女

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 しかし、さとりから聞いた話を信じるならば、博麗の巫女はどのような生活を送っているのだろう。自給自足の生活をするにしても、必要な道具は人里……幻想郷における人が唯一住める場所でそろえる必要がある。  特別な移動手段や、お空の様に空を飛べる鳥じゃない限り、このような険しい山道を利用するのは非常に不便だろう。そんな気持ちでさとりに質問してみると、意外な事に、此処の住人達は翼がなくとも空が飛べるらしい。  他にも、この幻想郷において、決闘感覚で行うルールも存在するようだが、それよりも実演感覚で空を飛ぶさとりに、修市は唯々呆然とするばかりだった。そういえば、お空と初めて会った時、さとりがお空に抱きかかえられていた事もあったが、あれもさとり自身が空を飛ぶ事が出来たから平静を保つ事が出来たのだろう。  もし空も飛べない状態で、上空で抱えられた状態だったら、恐らく修市は、相当動揺していた事だろう。そんな事を思いながら、地上に降りたさとりと共に、獣道に近い山道を登り始める。  太陽は真上に上り、暖かな気候からやや気温の高い気候へと変化する。気が付けば大粒の汗が流れ落ち、額に浮かんだ汗を手で拭いながらちらりと視線をさとりへと向けた。隣を歩くさとりも同じく汗をかき、やや息切れを起こしている。  普段から地霊殿の庭を散歩する事はあっても、山道を登った事がないのか、普段の落ち着いた表情とは打って変わって疲労の色を隠しきれていない。地底とは異なる気候に、妖怪とはいえ、身体が順応できていないのだろう。  もしくは、さとり自身、身体の出来は人間と同じかやや劣る所があるのかもしれない。そう考えると、今の状態でさとりに歩かせるのは酷なのかもしれない。 「古明地さん、もし宜しければ、古明地さんは空を飛んで移動して下さい」  此処まで付いて来てもらうだけでも優遇してもらっているのだ、それくらいは当然だろう。歩くよりも、空を飛んで移動した方が幾分かはましだろう。しかしさとりは、やや苦笑交じりに笑みを浮かべ、首を左右に振る。 「いえいえ、たまにはこうして運動しないと身体が鈍ってしまいますから。実際、ちょっと登っただけでこの体たらくです。普段からまともに運動していない自分を戒める上でも、歩いて博麗神社まで行きたいと思っています」
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