博麗の巫女

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 迷惑ではなければですがと、再び苦笑を浮かべる。 「それに、日野さんが歩いているのに、私だけ空を飛ぶなんて、そんな事は出来ません。飛ぶのでしたら、そうですね……日野さんが私と同じ様に空を飛べるのでしたら考えます」  それは、空を飛んで移動するつもりはないと暗に告げている様なものだ。修市は人間である為、空を飛ぶ事が出来ない。さとりの話しでは、空を飛ぶ人間もいるらしいが、修市に空を飛ぶような不思議な力はない。  出来ないと分かっているからこそ、さとりは敢えて条件付きで提案したのだ。そんなさとりに、修市も思わず笑みを浮かべる。  あぁ、成程、さとりにもこんな一面があるのか。普段の振る舞いからは想像できないが、中々に強情な所がある。そんな事を思いながら、さとりの意志を尊重しようと、これ以上修市は何も言わず、さとりの言葉に従い、そのまま歩みを続ける。  そして暫く、黙々と歩き続けた二人の視界に、件の神社が姿を現した。博麗神社、博麗の巫女が住んでいると言われている神社。獣道を抜けた先は、丁度神社の裏手らしく、遠目に鳥居が見える。 「日野さん、行きましょう、恐らく鳥居が見える方角に博麗の巫女、博麗 霊夢さんがいる筈です」  鳥居を眺める修市に、さとりが息を整えながら鳥居の方角へ指を指す。あそこに博麗の巫女がいる。期待と不安混じりに鳥居の方角に足を運ぶと、そこに一人の少女がいた。  巫女装束に身を包んだ少女、博麗 霊夢。外の世界に戻る方法を知っているかもしれない少女に、修市は漸く出会う事が出来た。  博麗 霊夢。整った顔立ちにストレートの黒髪と茶色の瞳、肩の露出した赤い巫女服を身に纏ったその少女は、修市とさとりに気付くと、掃除の手を止め、さとりに向き直り口を開いた。 「あら、参拝客なんて珍しいと思ったらさとりじゃない」 「お久し振りです霊夢さん。お空の一件以来でしょうか?」 「そうね、貴女の妹やペットの二人だったら何度かあった事はあるけどさとりとはあの一件以来ね」 「その節はお世話になりました。そして今回も、霊夢さんには少し御助力をお願いしたく、此方まで参りました」  さとりの言葉に、霊夢の視線が修市へと向けられる。 「ふぅん、貴方がさとりが言ってた外来人ね。地上は兎も角、地底に外来人が流れ着くなんて」
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