博麗の巫女

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 そう言って、修市をじっと見つめる。まるで値踏みをするかのような……いや、この場合、地底に流れ着いた外来人がどのような人物か見定めていると言った方がいいのだろう。 「初めまして博麗さん。僕は日野 修市と申します。博麗さんの事は古明地さんから聞いています。色々とお世話になると思いますが、宜しくお願いします」  そんな霊夢の視線にたじろぎながらも、さとりに続いて簡単に自己紹介を済ませる。 「私の事は霊夢で良いわ。他の皆も私の事は霊夢って呼んでるから貴方にだけ博麗さんだなんて呼ばれたら調子が狂うからね」 「えっと……分かりました。それでは霊夢さん、改めて宜しくお願いします」  初対面でいきなり名前で呼ぶよう言われたのは驚いたが、霊夢の希望通りに名前で呼ぶも、霊夢自身、さん付けはなくてもいいといった表情だったが、妥協案としては仕方ないと納得したのだろう。霊夢は二人にお茶を用意するから客間で待つように言うと、そのまま二人を置いて台所へと向かった。 「……なんだか、掴み処が無い方ですね、霊夢さんって」  霊夢に対して率直な意見を述べる修市。そんな修市に、さとりはチラリと視線を向けると、少し思案した様子で口を開いた。 「そうですね。彼女は裏表のない性格ですから、自分が思った事は正直に話す方なんですよ。なので……」  と、一瞬言葉が詰まったのかと思ったその後、 「修市さんの言う様に、霊夢さんはとても不思議な方なんです」  思わぬ爆弾が投下された。 「……えっと」  さとりの発言に、修市は言葉を詰まらせる。さとりとの間ではお互いに名字で呼び合っていた。しかし、先程の霊夢との遣り取りでは、出会ってから数分と経たずに名前で呼び合う間柄になっていた。  無論、最初の段階で霊夢の方から名前で呼び合った方が楽であるという意味で、お互いに名前で呼び合うようになったのだが、もしかしたらその事について何かしら思う所があったのだろう。  そういえば、クロに対してもそうだったと、思い返す。彼女の本名は、後から知った事だが、送那 クロエという。そしてその愛称から、皆はクロと呼んでいた。  知らなかったとはいえ、クロに対しては『クロさん』と呼んでいたし、霊烏路 空に対しても『お空さん』と愛称で呼んでいた。
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