博麗の巫女

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 覚妖怪とは、他者の思考を読み取る事で他者の精神に影響を与える。それは地上を追われ、地底に訪れた異形の妖怪達も同様に、さとりの前では皆が皆、自身の思考を読み取られる事を忌み嫌っている。  唯一、彼女の能力の恩恵を受ける存在と言えば、言葉を話す事の出来ない動物達だけだ。彼等は、自身の思った事を相手に伝える事が出来ない。故に、思考を読み取る事が出来るさとりは、自身の想いを伝える上で都合のいい存在ともいえるのだ。  最も、さとりの元に訪れた動物達は彼女の事を慕っているし、送り犬の妖怪であるクロは、ある種例外ともいえる。だが、修市は人間であり、他の妖怪と同様に、思考を読み取られると知った時、さとりを拒絶するだろう。  例え、本心ではそうではないと言いつつも、距離を取るのは明白である。そんな考えが浮かび、満足気に浮かべた笑みに陰りが出来る。一体何を思っているのだ?  少なくとも、修市とは此処までの関係ではないか。この後、霊夢に修市の経緯を説明し、外の世界に帰してもらうか、もしくは人里まで案内してもらいそこで保護してもらうか、その二択しかない。修市とは此処までの関係、きっと自分と一緒にいても碌な事は無いのだ。  ならば、良い思い出だけを残した状態で、別れを告げよう。その方がお互いの為に……いや、自分の為になる。  そんなさとりの表情の変化に違和感を感じたか、修市が何か問い掛けようとしたが、さとりは再びニコリと笑みを浮かべ、霊夢さんまだ来ませんねと、他愛のない会話で気を紛らわせ、早く霊夢が戻ってこないかと、そんな気持ちで彼女を待ち続けた。 「それじゃあ、さっきの話の続きなんだけど……」  三人用のお茶と茶菓子を用意して戻ってきた後、霊夢は二人と向き合う形で座り、二人が地霊殿から地上に訪れた理由について話しを始めた。話の内容としては先に博麗神社を訪れたクロから話を聞いているのだが、その詳細を確認したいらしい。  受け取ったお茶と一口飲み、ふぅっと息を吐いたさとりは、一度視線を修市へ向け、自分が話していいか確認を取ると、その後、修市との出会いとその後の対応について話しを始めた。
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