博麗の巫女

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 地霊殿の庭に修市が倒れていた事。倒れていた修市を介抱する為に地霊殿までクロが運び、その後、目が覚めた修市の記憶が失われていた事。記憶がないとは言ったが、記憶の全てを失ったわけではなく、自身の名前やある程度の日常生活に支障が出ない程度の知識は残っていた事。修市を外の世界に戻す為に、地上に上がるまでの間、地霊殿の主であるさとりの権限により、修市を保護し、此処まで送り届けた事。  そして、博麗の巫女である霊夢ならば、もしかしたら修市が地霊殿に流れ着いた理由や、その元凶である妖怪の賢者 八雲 紫から何か話を聞いているのではないかといった内容を大まかに説明した。ただ一つ、さとりの能力が修市に通じないという事だけは、口に出して言う事は無かった。  その件に関しては、予めクロに渡していた書状の中に記載していたが、その事を知るのはその書状を受け取った霊夢だけで、クロや修市にはその事を伝えていない。  理由としては、さとりの能力が通用し無い事を知る事で、クロが修市に対して何かしらの警戒心を抱くのではないかという事に対する予防。そして、修市にこの事を伝えなかったのは、自身に何かしらの能力が宿っていたのではないかという不安を与えない事。もう一つ、自身が何故、修市に能力が宿っているかもしれないという事を知ったが、それを追及される事を防ぐ為に、さとりは二人に能力の事を伝えなかったのだ。  一通りの説明を受け、霊夢は手元の茶器に口を付け小休止を取る。その際、チラリと視線をさとりに向けたが、それは霊夢なりの合図でもあった。確認ではあるが、自分の口から修市に能力に目覚めているかもしれないと伝えて良いのかという合図。さとりの思考を読み取る程度の能力が使える事を前提に向けた視線だが、それを察したさとりも、修市に気付かれない程度に小さく頷いた。  どうやら、さとりの能力が通用しないのはあくまでも修市だけで、修市が近くにいようとも、さとりの能力そのものが他の妖怪や人間に通じなくなるわけではないらしい。最も、修市がクロの傍にいた時も、クロの思考だけは読み取る事が出来たので、その対象が人間に変わったとしても、問題ないとは思っていたが、どうやらその通りだったらしい。
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