博麗の巫女

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 さとりと霊夢との間で無言の遣り取りをした後、霊夢は視線をさとりから修市へと向ける。許可を得た以上、変に気を使う必要もない。そんな気持ちで、霊夢は修市に、今後の事について話しを始めた。しかしその内容は、修市にとっても、そしてさとりにとっても意外なものだった。 「最初にこれだけは言っておくけど、外の世界に戻れると変に期待をして此処に来たのであれば、それは現状では不可能であるとだけ言っておくわね」 「え、不可能って、それは一体どういう事ですか?」 「貴方だけじゃないって事よ。最近、貴方と同じようにこの幻想郷に流れ着いた外来人が後を絶たないの」 「僕と同じ境遇の人が……沢山?」  霊夢の突拍子もない言葉に、修市は唖然とする。外来人とは、簡単に言えば妖怪の贄となる為に連れてこられた存在だと聞いた。此処に流れ着いた外来人の多くは、妖怪の餌になっている可能性がある。  地底には修市以外に外来人の存在は確認されていないが、それでも、この地上では、自分と同じ境遇の外来人が数多くいるという事を霊夢は話しているのだ。ならば、此処に流れ着いた外来人達はどうなったのだろう? 「それでは、他の外来人の方々は妖怪の餌に?」  修市が思った疑問にさとりが問い掛けるも、霊夢は首を左右に振って、さとりの予想を否定した。 「言っとくけど、私が見かけた外来人はそのまま人里まで送り届けたわ。だから、私の知る範囲で見つかった外来人は人里で保護されているから安心して……と、言いたい所なんだけどねぇ」 「何かあったんですか?」 「そうねぇ、何かあったかを話す前に、さっきの話には続きがあるんだけど、その保護された外来人の数が問題って事なのよ」  以前にも、外来人が幻想郷に流れ着く事は多々あったが、近年はその規模があまりにも異常であった。毎日毎日、気が付けば外来人が幻想郷に流れ着き、時に保護し時に捕食されと、地上では外来人の話しでもちきりなのだ。  日を追う毎に膨れ上がる様に増え続ける外来人。彼等が増える毎に人里は彼等で溢れ返り、気が付けば、これまであった人里の印象が徐々に変化し、村として機能していた人里が、街や都市として機能するに至るまで、その規模が拡大したのだ。
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