博麗の巫女

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「悪いんだけど、紫って神出鬼没で何処で何をしているか分からない所があるのよ。ふらっと現れては意味深な言葉を投げ掛けてそのままいなくなるのは日常茶飯事。此方から連絡したくても連絡する手段もない。仮に今回の一件が異変によるものだとしたら、彼女の方から何かしらのアプローチがあるんだけど、それすらもない以上、私も下手に行動する事が出来ないわ」  もしかしたら、今回の一件が何かしらの異変で、その調査をしていた紫の身に何かあったのかもしれないけどねと補足を入れるが、確かにそれならば納得がいくと霊夢は言う。大量の外来人が幻想郷に流れ着く事が異変というならば、それは外の世界と幻想郷を分け隔てる博麗大結界に不測の事態が起きている可能性もある。  博麗大結界とは幻想郷全体を覆う巨大な結界であり、本来ならば外の世界と幻想郷との行き来をほぼ不可能にしている結界である。ただし、抜け道が無いわけではなく強力な妖怪や神々ならば行き来を可能としている。  更に、意思のないものならば、無差別に通過する事が出来る為、今回の修市の様に意識を失った状態ならば通過できる可能性もあるという。そして、その結界を管理しているのが八雲 紫であり、そして紫の式神である。  その結界に異変が生じたとなれば、外の世界の住人達が大量に幻想郷に流れ着く現象にも納得がいくし、修市が地霊殿に流れ着いた理由にも納得がいく。紫と連絡がつかないのも、結界に異常が生じたのでその修復に時間を割いているとも考えられる。  そうなると、紫本人に、修市が地霊殿に流れ着いた理由を聞くのは少々時間がかかるかもしれない。 「それでは、修市さんが外の世界に戻れないのも、現状が分からない状態で判断を下す事が下策と判断した為でしょうか?」  と、霊夢の話しからそこまで推測したさとりは、何故修市が外の世界に戻れないのか、霊夢の思考を読み取りつつ、その理由を理解する。結界が不安定である可能性がある以上、下手に手を出して、不測の事態が起きた時、霊夢自身の力ではどうにもできない可能性もあるという事だ。  実際、博麗大結界とは言われているが、その結界を維持しているのはあくまでも八雲 紫とその式神達である。一人や二人の外来人ならばどうにかなるかもしれないが、人里に保護された外来人、それも、多くの外来人を外の世界に戻すことが難しい為、修市一人を特別扱いする事が出来ないという訳だ。
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