博麗の巫女

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 となると、修市の今後の身の振り方は、やはり人里で保護してもらうしかないだろう。そう思っていたさとりだが、霊夢の思考を読み取った瞬間、思わず目を見開いた。何故ならば、霊夢の思考からは、修市が人里で保護してもらう事が難しいという思考が流れてきたからだ。 (修市さんが人里で保護する事が出来ない……一体何故?)  霊夢の思考を読み取る事により、霊夢が次に話そうとしている内容を事前に把握する形になったさとりは、思わずその真意を確かめようとした。しかし、いざ言葉が出かかった時、真意を確認する事の意味に気付き、ぐっと口を閉ざした。  もし今、霊夢が話そうとしている内容に口を出せば、違和感が生まれる。何故、話しもしていない内容を先読みする事が出来たのか?修市はその意味を理解できない程、思慮が足りていない訳ではない。  それこそ、その違和感に対して思慮を巡らせた場合、最悪、さとりの能力に気付く可能性も十分にあり得るのだ。何故ならば、修市には一度、クロの能力を見せている。妖怪のアイデンティティーを形にした能力である送る程度の能力。  送り犬であるクロだからこそ発現したその能力は、ある意味、さとりの能力からさとりの妖怪としての種族を判別するには十分すぎる能力である。思考を読み取る妖怪などそう多くはない。例え、記憶がなくとも、その妖怪に関する知識がなくとも、『さとりは思考を読み取る力をもった妖怪』程度には認識されるだろう。  思考を読み取るという事は、自身の全てが相手に筒抜けになっているという事だ。そこまでの理解に至るにそう時間はかからないだろう。そうなれば、修市はさとりの事を避けるに違いない。出来得る事ならそれは避けたいとさとりは思った。  例え僅かな期間でも、例え保護するという名目であろうとも、修市と過ごした僅かな期間はさとりを充実させていた。例えそれが仮初のものであろうとも、さとりにとってはそれでも充実とした時間だったのだ。  その思い出が、自身の存在理由で台無しになってしまう事は避けたかった。いずれは気付かれる事にはなるかもしれないが、それでも、もう少しだけでいい、修市には自分がさとり妖怪であるとは気付かれたくなかった。  そんなさとりの思いの内を察したのか、霊夢は改めて修市に目をやり、お茶を啜りながら一旦間を置く。そして、さとりが読み取った思考の内容を口出しする前に、前置きを一つ口にした。
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