博麗の巫女

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「それで、今後の修市の扱いに関してなんだけど、本来なら、人里で保護してもらうのが普通なんだけど、それも難しいって事を前もって言っておくわね」  その前置きは、さとりが問い質す為の前置きである。その言葉を合図に、さとりは改めて、その真意を確認した。 「それは一体どういう事ですか? 何故、修市さんは人里で保護する事が出来ないと?」 「簡単な事よ。今、人里は外来人で溢れ返っている。ま、溢れ返っているって言っても、それでも元々いた人里の住人の方が数が多いんだけどね。でも、問題が無いと言ったらそれは嘘になるのよ」  霊夢の話によると、現在の人里は、村としての規模から街としての規模にまで発展している。しかし、増えすぎた人工のせいで生活必需品に充てられる資源が不足し始めているのだ。  それは主に食材であったり、そして住む土地であったり、様々である。特に最近では、妖怪達から身を守る為に、木製の柵程度に周囲を囲っていた人里だったが、外来人の技術が提供された事により、石材によって建築された巨大な城壁で囲まれた城郭都市となった為、人が住む土地が限られているようだ。  その為、里の人々の協力により、突貫作業で新たな住居を多く増築してはいるのだが、現在も流れ着き続けている外来人達は、自分達が住む場所が殆どなく、その多くが狭い部屋で共同で生活する様になっており、修市がその中に入る事も難しいとの事だ。  それに関しては、妖怪達の被害……人里にいる限り、妖怪の被害はないのだが、やはり囲いをつくる事で安心を得たい外来人の知恵を借りた者が先の事を見通す事が出来なかった事と、外来人の規模が増え続ける事が予想外だったことも相俟って、人里内は一部の者達が困惑している状況だという。  とはいえ、絶対に不可能という訳ではなく、無理をすれば何とかなるかもしれないとの事だが、最終的に判断するのは修市であると霊夢は告げ、その判断を修市に委ねると、今度は二人でどうするか考える様にと、言葉で促した。  霊夢の言葉に、修市は選択を迫られる。一つは本来の目的通り、外の世界に帰れなかった場合、人里で保護してもらう事。そしてもう一つは、さとりの住む地霊殿で改めて保護されるかである。
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