博麗の巫女

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 しかし、最初の選択肢にある人里は、急激な技術の発展と、先を見通す事が出来なかった一部の有権者の失策、そして増え続ける外来人の対応により、生活が困難であるとの事。そう考えると、これまで通りに地霊殿で客人として保護される方が生活の面では不自由はないだろう。  だが、それはあくまでも地上に送り届けるまでの間客人として扱うというさとりの言葉があったからこその待遇。既に地上に送り届けられた以上、先の言葉は達成された事になり、修市を地霊殿で保護する理由は見つからないのが現状である。  となると、最初の選択肢である人里で保護してもらうのが自然の流れだろう。例え生活が困難になろうとも、それはあくまでも修市個人の問題であるうえ、一時的なものである。霊夢の推測が正しければ、今回の異変も、博麗大結界が元の状態に戻るか、八雲 紫と接触する事が出来れば、自ずと解決する筈。  そうなれば、人里に住んでいた外来人達も元の世界に戻る事が出来るし、人里にいれば、異変が解決した折に、他の外来人と共に、修市も元の世界に戻る事が出来る。仮に地霊殿で生活する事が出来ても、地上の情報が出回るには時間がかかる上に、地底には多くの妖怪達が蔓延っており、修市にとって安全な場所は地霊殿以外にないだろう。  だが、地霊殿に人間である修市がいると分かれば、ふとした拍子に彼等に襲われる可能性も十分にあり得る。安全面においても、異変が解決した後の身の振り方に関しても、人里で保護された方が自分の為になるだろう。  さとりもそれを理解しているのか、修市に視線を向けるも、小さく頷くだけで、それ以上何も告げず静観している。この後の事は、自分で判断しろという事だろう。自分にとって最善である判断を、自分の意志で決め、結論を出す。  その選択を迫られた修市は、暫しこれまでの事を振り返り、そして、二人の前で自身に取っての最善を口にした。  修市が今後の事について決断を下そうとした丁度その頃、地底の入口でさとりの帰りを待っていたクロは不思議な体験をしていた。その体験とは、地底を訪れようとする珍客との出会い。本来、地底から地上に上がる妖怪なら珍しいものではなかったのだが、その逆、地上から地底に降りようとする妖怪なんて珍しいものを見たなと、その時のクロはその人物をぼんやりと眺めながらそう思っていた。
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