博麗の巫女

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 人里ならば、少なくとも身の安全だけは保障される事は最初の段階で話をしている。住むには環境が変わり苦労するかもしれないが、それでも妖怪に襲われる心配が殆どない人里の方が、精神的な負担は大きく軽減される。  今回起きている、外来人達が大量に幻想郷に流れ着く謎の異変に関する一件も、解決した折には人里に住む外来人達から優先的に行われるため、地底に連絡が届くのはその後になる上、連絡が届いても直ぐに返せる保証が出来ない事も伝えた。 「それでも構いません。僕の事は後回しで大丈夫です」 「そう、修市がそう判断したんならそれを尊重するわ。ただし、何度も言うようだけど……」 「全ては自己責任……ですよね?」 「そうよ。分かってんならそれで良いわ。それじゃあ、修市の今後については地霊殿預かりという事で、さとりと色々と話しをしたいから、修市はその間、相談料として神社の掃除をしておくこと。話が終わったらそこで止めてもいいからよろしくね」 「はい、分かりました。それでは失礼します」  霊夢の忠告すらも、構いませんと即断する修市に、これ以上何を言っても変わる事は無いと判断したのか、改めて了承した霊夢は、修市を外に出すと、コホンと咳払いを一つ、さとりと向き合い、今後の事について話しを始めた。 「それで、修市はあぁ言ってたけど、さとりはどうなの?」  内容はやはり、修市の事である。本来なら平等主義の霊夢であるが、こうして知り合った以上、ある程度の心配りというものがあるのだろう。霊夢に質問されたさとりは、修市の一件と、他の外来人との一件を含めた上で、その質問に答えた。 「私も、修市が決めた事でしたらそれを無下に扱いたくないと思っています。しかし、正直な所、驚いているというのが本音ですね」 「あんたの所にいたいって言ってた事?」 「はい、私が覚妖怪である事を修市に話していなかった事もあるのですが、それでも地霊殿に残りたいと言われた時、驚きが半分と嬉しさが半分と言いますか……」  と、照れ臭そうに話すさとりに、霊夢も内心同意する。さとりにとって、修市は珍しい存在なのだろう。様々な要因が重なったとはいえ、さとりの住まう地霊殿で世話になりたいという人間はそういない。  それこそ、妖怪ですら、地霊殿には近付きたくないと言われる程だ。それは人間も変わりなく、さとりの存在は忌み嫌われし妖怪達が跋扈する地底においても異様としか言えないくらいに、畏れられていたのだ。
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