博麗の巫女

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 まるで、異変の前触れの様に感じる今回の騒動に霊夢は直感ではあるが危険性を感じている。もしかしたら、紫が表舞台に出れない理由もそこにあるのではと、そこまで思考を巡らせた後に、ふぅっと溜息を漏らす。 「ま、あれだけ外来人が流れ着けば、中にはそういった輩が紛れ込んでいてもおかしくないと言ってしまえばそれでお終いなんだけど、要はあんたも気を付けなさいって事よ。地底に関しては、そっちから何か連絡がない限り、私が出向く事は基本的にないんだからね」  かつて地底に赴いた理由も、地上を破壊し、灼熱地獄を創り上げようとしたお空を止めようとした事がきっかけであり、それまで地底との交流など一切なかった事から、霊夢は地底で何が起きようとも、それを確認する術がないのだと告げている。 「勿論分かっています。霊夢さんはあくまでも博麗の巫女として異変が起きた際に出向く事はあっても、地底に足を運ぶ理由は基本的にないと心得ています。ですので、何かあった場合は出来得る限り此方からも連絡はさせて頂きますが、先ずは人里に溢れ返っている外来人の方々の対応をお願いします」  対するさとりも、霊夢の諸事情を含め、地底で何かあった場合は自分達で対応するが、最悪の場合、協力を仰ぐ可能性もあると伝えると、庭の掃除をしているであろう修市の方へ目を向け、呟く様に言葉を発する。 「もしかしたら、修市が地霊殿に流れ着いた事にも、何か意味があるのかもしれません」  本人は覚えていないだろうが、多くの外来人が地上に流れ着く中、たった一人だけ地底に流れ着く理由が何処にも見当たらない。もしかしたら、さとりが知らない内に地底に流れ着いた外来人もいて、修市を除き、地底の妖怪の餌食になった可能性も十分にあり得る。  さとりの思考を読み取る程度の能力も、地底全体の妖怪や怨霊の思考を読み取る事が出来るわけではない。仮に、全ての妖怪や怨霊の思考を同時に読み取る事が出来たなら、膨大な情報量に頭がパンクする事になるだろう。  だからこそ、読み取る事の出来る思考もある程度限られており、脳にかかる負担を軽減させているのだと、さとりは解釈している。今度、時間があれば旧都に足を運び、その辺りの情報を収集する必要もあるのかもしれないと思いながら、修市と同じ境遇の外来人を見つけた際は修市と同じように保護した方が良いのかもしれないと内心そう思った。  しかし、そんなさとりの思いとは裏腹に、霊夢はその結論が最悪の結果を生まないかと危惧している様子。何故なら、霊夢は修市と初めて接点を持った際に、彼の雰囲気の何処かに陰りがある事を感じていたからだ。  何かを隠している、それが後ろめたいものであるからこそ、雰囲気の端々に陰りがあるのだと思いながら、霊夢はさとりに注意を促すも、どうやらさとり自身も、それに気付いているらしく、困ったような笑みを浮かべながら、それでも大丈夫ですと、さとりは小さく頷いた。 「問題ありません。確かに修市は、私に何か隠し事をしているようです。ですがそれは私も同じ。覚妖怪である事を隠している私と同じなんです。ですので、隠し事をしている者同士、上手く付き合っていきたいと思っています」
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