博麗の巫女

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―地底 ???―  さとりと霊夢、二人の間で交わされた遣り取りも終わりを迎えた頃、旅人姿の少女と同じく地底に降り立った外套を纏った人物は、旧都を一望できる高台からそれらを見下ろし、一人笑みを浮かべていた。これから起こる旧都の異変を前に、堪える事の出来なかった笑い声が地底に響き渡る。  しかし、その声が旧都の妖怪達に届く事は無いだろう。その人物の声は何処か機械染みていて抑揚が感じられない。まるで声帯を上手く使いこなせていないような、拙い発音で、それでも周りの者がその人物の声を聞いただけで、その人物が歓喜の声を漏らしているのだと誰もが理解できる程に、その人物はこれから起こる異変を……これから自分が起こす異変を心から祝福し、そして彼等に、地底の妖怪達にこれから起こるであろう異変に警鐘を促す。  さぁ、始まりの時は来た。妖怪達よ、恐怖に慄け。これは異変だ。私の異変だ。私が起こす私の異変だ。私は此処に、異変を起こしに来たのだ。怯え竦め。恐怖と狂気の祝杯を挙げよ。悲鳴と絶叫は祝宴の詩だ。この世の常識を覆し、世界をあるべき形の終焉へと迎え入れよう。その為の準備は既に整えてある。さぁ、異変を起こすぞ、楽しい楽しい異変を起こすぞ。  漏れ出る声は男の声色、しかし無機質で機械の様なその声は、果たしてどこまで信用すればいいのか判断が付かない。笑う、笑う、その不可思議な声色は笑い続ける。そして、笑い続けるその声を聞いた者は、その声色を知る人物は、皆が皆、疑問に思うだろう。何故貴方がそこにいると。
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