博麗の巫女

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―地上 博麗神社―  場所は再び、博麗神社に戻る。今後の事について話しを終えたさとりは庭で掃除をしていた修市を呼び戻すと、地霊殿に戻る旨を霊夢に伝えた。 「それでは、何かありましたらご連絡ください。此方も何かあった際は使いの者を連絡役としてそちらに向かわせますので、宜しくお願いします」 「そうね、私の方も何か進展があったら連絡するわ」  ま、気が向いたらだけどと、初めて会った時と同じ様に、掴み処が無いというか、表裏がなく、本心からそう言っているのだろう霊夢の言葉に苦笑を浮かべつつ、二人は博麗神社を後にした。  来た道を戻り、また険しい獣道を歩く二人。修市はさとり達が何を話していたのか分からないまま地霊殿に戻る事になったが、こうして地霊殿へと戻る道の最中、さとりから何も話題が上がらない所から見て、自分を地霊殿に預ける事に対して、問題はなかったのだろうと内心安堵した。  しかし、改めて自分が下した決断に対して、我ながら呆れ半分驚き半分というのが修市の感想である。さとりに断られなかった事もそうだが、記憶も何もない自分が、地霊殿の雑務をこなす事が出来るか分からない状態で、何かできる事があったらなんてあやふやな言葉に耳を傾けてくれたさとりに感謝しつつも、本当に良かったのかと不安にもなる。 「あの、古明地さん……」  思わず不安な気持ちをさとりにぶつけてしまいたくなる感情に、自ずと言葉が漏れる。しかし、当のさとりは、修市の言葉にやや不貞腐れた様な表情を浮かべると、小さく咳払いを一つ漏らし、発言の訂正を要求した。 「あ、すいません……えっと」  再びさとりさんと言いかけ、言葉を詰まらせる。 「さとりさんは本当に良かったんですか?」  同じミスを繰り返さない様に一度気持ちを切り替え、質問を投げ掛ける。外来人達が被害にあっている異変が解決するまでの間、自分を地霊殿においておく事について。自分で下した決断とはいえ、さとりの事を考えずに自分勝手に地霊殿に残る事を主張してしまった事に対して、さとりにも思う所はあるだろう。  それにも関らず、修市の意見を尊重したさとりの意図が気になったのだ。しかし、さとりはといえば、何を今更と言わんばかりに笑みを浮かべ、修市の質問に答えた。 「良かったも何も、私は最初に言っていた筈ですよ。保護する以上、最後まで面倒を見ると。今回は外の世界に戻る算段が付きませんでしたがそれは仕方がありません」
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