三者三様

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三者三様

 修市がさとりとクロと共に地霊殿へと戻る最中、そして、外套を纏った人物が旧都を一望できる場所で異変の始まりを宣言した丁度その頃、外套を纏った人物よりも先に地底を訪れた旅人の少女こと種島 火野衣は、外套を纏った人物とは異なる場所で一息ついていた。  彼女が地底を訪れた理由、それは、幻想郷に流れ着いた外来人の調査であり、彼等、若しくは彼女達が幻想郷の様々な場所で活動している可能性を考慮し、此処、地底においても外来人が活動しているかどうかを確認する為でもあった。最も、地底を拠点に活動できる人間など基本的には存在しないだろう。  地底は忌み嫌われし妖怪達の巣窟。危険を承知でこの地を訪れる外来人など、よほど腕に覚えのある者か、若しくはこれから異変を起こそうと考えている者か、若しくは唯の痴れ者か……。  どちらにしても、まともな神経で地底に居座る者はいないと断言できるが、物事には必ず例外が存在する。少なくとも、これから火野衣が調査する対象となる外来人は、その例外中の例外。彼女を地底の調査に抜擢した時琶曰く、妖怪である彼女達の手に余る存在、場合によっては地底の妖怪達ですら凌駕する実力を兼ね備えた異質な存在。例えばそう……火野衣と時を同じく、地底を訪れた外套を纏った人物などがその対象である。 「さて、無事地底に到着したはいいが、先ずは何処から手を付けるべきか……」  活動を開始するにしても、旧都は広い。加えて、隠密に行動するとなれば、あまり派手に動く事が出来ないだろうが、時琶が言っていたように、彼女の風貌からすれば、物見がてらに地上から地底に訪れた妖怪と認識されるだろう。要は、外来人達に怪しまれない様に行動を取ればそれでいい。  問題があるとすればただ一つ、旧都の中央に居を持つ覚妖怪、古明地 さとりに思考を読み取られる事だろう。さとりの前では隠し事は不可能。自分達がこれからやろうとしている事、即ち、現在幻想郷で起きている異変に関する情報が、彼女の能力により筒抜けになる。  自分達の主、白鳳山 龍蓮がこれから起こそうとしている異変すらも、さとりに気付かれる可能性もある。それだけは避けなければならない。 (とはいえ、地底に住まう覚妖怪が地上の異変に首を突っ込む可能性は低いと思うのじゃが、まぁ、不安要素は少ないに限るというもの。時琶殿の推測では彼女は地霊殿以外で活動する事は殆ど無いだろうとのこと。仮に覚妖怪が旧都に足を運ぶような事があれば、自ずと噂として拙の耳にも入るじゃろう)
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