三者三様

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「まぁ、そんなもんじゃないのか? 人間と妖怪とでは価値観が違うからな。僕達が出来る事を人間が出来るとは限らないからな。勿論、その逆だってある。それに、僕だって地霊殿に何か貢献できているかって聞かれたら、そこまで貢献できてないなって実感してるんだぞ」 「そうなんですか?」 「あぁ、そんなもんだ。さとり様の為になる事であれば何でもしたいけど、僕ではどうしようもない事だって沢山あるんだぞ」  そう言って、クロは自分が出来る範囲で貢献できているであろうと思う仕事内容を説明する。基本的にペット達の喧嘩の仲裁が主になってはいるが、その他にお燐やお空のどちらかが不在の際、灼熱地獄跡の温度調整の手伝いの一環として、薪の運搬などが主な仕事である。  とはいえ、クロも灼熱地獄跡の環境に対応出来るわけではなく、一度お空の背中に乗り、灼熱地獄跡の上空を見学した事があったが、その時の事を懐かしむ様に修市に話した。 「あの時は何も考えずにお空姉さんの背中に乗せてもらって灼熱地獄跡を見学したけど、暑すぎて酷い目にあったんだ。さとり様にも心配させてしまったのは本当に申し訳ないと思っているし、あれからはあそこに近付かないようにしてるんだ。だから、出来る事としたら近くまで薪……人間の死体を運ぶ程度だけど、まぁ修市にはお勧めは出来ないな」  何故なら死体の大半は人間の死体。薪として運ばれるその死体は、決して綺麗な状態とは限らない。 「人間の死体を薪として利用してるんだ。その時点で価値観が全然違うだろ? それ以前に、修市があれを間近で見たら暫く肉類を食べる事も出来ないんじゃないか?」 「……そんなに凄い状態なんですか?」  以前と違い、饒舌に話すクロに、修市が思わず問い掛ける。そんな修市の問いに、クロは暫し思案すると、意味ありげな笑みを浮かべ、スッと目を細める。 「興味があるなら見てみるか? 丁度お燐姉さんが新しい人間を運んで間もないから、まだ比較的綺麗な状態の人間の死体を見る事が出来るぞ。まぁ、他に保管している死体に関しては一切保証できないけどな」 「……遠慮しておきます」  見たら絶対に碌な事にならない。そう思えるくらいに、意味深な笑みを浮かべていた。 「そうか、それは残念。でもまぁ、気が向いたら何時でも言ってくれ。何時でも案内するからな」 「あはは、出来れば遠慮したい所ですね」  そんな他愛の無い会話に最中、修市は思った。クロは何故、人間と妖怪の価値観について此処まで詳しいのか。
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