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「こ、こいし。どうしたんですか?」
先程までの笑みは消え、さとりの表情からは困惑の色が浮かぶ。しかし、こいしは相変わらず身を浮かべたままで、周囲を見渡し、自分達以外のペットがいないか確認を取ると、さとりの手を掴み、そのまま部屋の真ん中まで移動した。
「ううん、ちょっと聞きたい事があったんだけど、部屋の外だと色々と気になってしょうがなかったからさ」
そう言って近くの椅子にさとりを座らせると、後ろに回り込み、さとりの背中にもたれかかる。
「さっき、此処に戻る途中で妖怪じゃない……そう、人間の男がいたんだけど、あれ、お姉ちゃんの何?」
こいしの言う、人間の男という単語に、さとりは誰の事を指しているのか直ぐに理解する。あぁ、成程、此処に戻る最中に修市に会ったのか。
地上では人間を何度か見かける事はあっても、地底の、それも地霊殿で人間がいるなんて不思議でしょうがなかったのだろう。そう思いながら、順序は違うが、修市の紹介をしようと思い、改めてこれまでの経緯を説明しようとした。
「人間……あぁ、修市さんの事ですね。彼は外来人の日野 修市さんです。こいしが不在の時に庭で倒れているのを発見して、それで……」
地霊殿の主として修市を保護し、そして地上で博麗の巫女と会い、そのまましばらくの間、此処で預かる事になったと、そう説明しようとしたさとりだったが、さとりの様子にこいしは思う所があったのだろう。話の途中でさとりの言葉を遮り、率直な意見を口にした。
「あぁ、成程。そういう事なんだ。うん、分かった。お姉ちゃんの今の状況とあの人間の関係もある程度分かったかな、うん」
「……こいし?」
「ん? あぁ、ごめんね。さっきのお姉ちゃんの態度でなんとなーく分かっちゃっただけだから」
「分かった……と言うのは?」
何もかもが唐突過ぎて、さとりの心臓がドクンと大きく跳ね上がる。次の瞬間、こいしの口から発せられるであろう言葉に、さとりは言い様の無い不安に駆られる。だが、さっとりはその言葉を聞かずにはいられなかった。
「あの外来人の事だよ。お姉ちゃんさ、あの男の思考読み取れないんでしょ」
「っ!! こいし、どうしてそれを……」
核心をついたこいしの言葉に、さとりは大きく目を見開いた。クロを始めとしたペット達にも気付かれなかった秘密を、こいしは会って間もない短い時間で簡単に見抜いて見せたのだから無理もないが、何故こいしはさとりが修市の思考を読み取る事が出来なかった事に気付いたのだろうか?
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