金死篇3

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金死篇3

    ◆◆◆    後日、私は女が常連だったという噂のサイトにアクセスしてみた。  そのサイトは、聞いたこともないようなオカルトサイト。  歪な願望を体現した都市伝説と呼ばれる話の数々が、歪な宝物のように収められていた。  そして――、 『金死篇(きんしへん)』  そう題された都市伝説の内容に、私は思わず息を呑んだ。 『ある日、黒い封筒が貴方のもとに届く』 『その封筒は、決して捨てたり誰かに渡してはならない』 『その封筒の中の手紙は、貴方の願いを叶え、貴方を幸福へと導く方法が記されている』 『けれど、封筒を手離してしまったら最後、貴方は――』 「…………」  何故だろう。  ただのオカルトサイトの筈なのに……。  私はただ閉口してその画面を見ていることしかできなかった。  あの、のっぺりとした封筒を彷彿とさせる黒い背景に金文字で装飾されたサイトの文面を、私はゆっくりと目で追っていく。  不安が、疑問が、疑心が――確信へと変わっていく。  あの黒い封筒は確かに『金死篇』だったのだ。  ただし都市伝説にある「不幸の手紙」とは違う。持ち主の願いを叶えること以外――周囲の人間全てが不幸になる。  あの事故以降、封筒は私の前に姿を現していない。鞄の中をあさっても見当たらない。  まるで闇の中に溶け込んだかのように、きっと奥底で機会を伺っているのだろう。  だから、そう。  貴方がもし、黒い封筒を見つけたら――誰にも渡さず、肌身離さず持っていること。  そうすれば……。                 【了】
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