お百度参り

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お百度参り

「95……、あと5往復だ」 「もはや、神にすがるしかないわ」  ある年の冬のこと、ともに30歳ぐらいの夫婦がどこにでもありそうな人気のない神社で「お百度参り」をしていた。この夫婦は『金のなる木』が本当にあると本気で思い込んでいた。それがあれば楽に暮らせると、神様に場所を教えてもらおうとしていたのであった。  二人は短期のバイトで金をためては旅行に出かけて金のなる木を探し回っていたが、そろそろ身体も限界にきていた。  この神社、鳥居から本殿からおよそ100メートルの区間を100往復するとそれが達成されるのだが、普段の運動不足がたたってか、もはやヘトヘトになっていた。 「98……、世界中どこに行ってもなかった。アフリカの商人から買ったタネはただの木だったし、もはや神頼みしかない」 「そうよ、もうそれしかないわ、頑張りましょう!」  アフリカの商人から買った「金のなる木の種」は、クラッスラ・ポルツラケアという、日本で通称「カネノナルキ」と呼ばれる植物の種で、この夫婦の家のプランターに植えられていたが、冬に硬貨のような実しかつけなかったので、二人はだまされたと思っているから始末が悪い。 「100……! やった! ついにお百度参りを達成したぞ!」 「さあ! 神様出てきて下さい!」
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