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するとどうだろうか、ボワッとした煙があがったと思うと、本殿から神御衣(かむみそ)に身を包んだ男が二人の前に現れた。
「この時代にお百度参りとはよほどの願い事があると見える。何が望みか申してみよ」
二人はあまりの神々しさに絶句していたが、促されて願いを言った。
「神様、金のなる木をください!」
「お願いします。手術が必要な父がいるんです!」
妻の言葉はとっさに出たウソなのだが、神様はしばらく考えたのちにこう言った。
「よろしい。ただし無から有を生み出す願いは一生に一度しかかなえられない。これだけの願いとなると二人の「一生に一度」を使い切ることになるが、それでもかまわないか?」
「「はい、もちろんです!!」」
誰もいない境内に二人の声が響いた。それを聞いた神様は、
「よろしい。ではお主たちの家にある木から金がなるようにしておこう。ただし、木の存在は誰にも言ってはならぬぞ」
「「ありがとうございます!!」」
そういうと神様は姿を消した。二人は意気揚々と家に帰ると……
「あれ? あの木……」
夫が木に近づいてみるとなんと本当に金色の硬貨のような実がなっていた。
ふたりが大喜びで実を集めるとおよそ100グラムぐらいあった。
「これを売ってお金にすれば50万円弱(※)にはなるぞ!」
「やったわね! ついに夢がかなったのよ!!」
早速二人は金の実を売りに行ったのであった……
※=金の取引価格は常に変動します。
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