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生み出す力が欲しい
「0から1を生み出す力が欲しかった」
私がよく言うセリフである。
そして私が一生得ることができないであろう力である。
趣味の一つに切り絵がある。
気に入ったデザインを切り絵の本などで探し、
一枚の真っ黒な画用紙を切って、作品にする。
達成感はある。人に見せれば「すごい」と言ってもらえる。
でもそうではない。
私が欲しいのは切り絵を綺麗に作りあげる力ではなく
その素敵なデザインを創造する力なのだ。
1を10にする力というのは、努力で開眼させることができる、と
私は考えている。
でも0から1を生み出す力というのは、生まれ持った才能であり
努力で獲得できるものではないのだ。
何時間かけてもペンを持った手は動かないし
目の前の真っ白な紙に何も描くことができない。
だから0から1を生み出せる人への強烈な敬意と憧れを抱いている。
…そしてその中には強烈な嫉妬も隠れている。
自分からみてそんなに魅力的ではない絵を描いている人も
原案さえあれば私の方が上手く作れる、と思うような作品を
発表する人も、私にはない力を持つ人々であり、私は決して敵わない。
私は0から1を生み出せないのだから。
すごい、羨ましい、ずるい…そんな気持ちが今日も心を駆け巡る。
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