梅雨と

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梅雨と

 薄ぼけた商店街から少し離れたまた少し古臭い団地の一室で叶ひかるが目を覚ましたのはちょうど朝六時五分前だった。目覚まし時計を止めるとひかるはカーテンの隙間から窓を叩く梅雨の雨垂れをぼーっと眺めた。また一日が始まろうとしている。  ひかるは本棚と布団だけの簡素で狭い和室を出るとリビングに向かった。四人がけのテーブルにはひかるの父親が一升瓶片手に突っ伏していびきをかいていた。  ひかるはさっと高校の制服に着替えると、ほぼ空っぽの冷蔵庫から卵を取り出しスクランブルエッグを作った。  皿に盛り付けると湯気とともにバターの香りが立ち上った。  そしてそれをお盆に乗せるて純の部屋まで持っていった。 「純、おはよう朝だよ」  純は布団の中で丸まってまだ起きたくないと言っているようだった。 「ここに朝ごはんを置いておくね」  布団の中で丸まっている弟にそう言うと部屋から出た。  
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