梅雨と

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 明山ゆうは生徒会の資料を山ほど持って職員室に入った。いつもの日課だったので自分の顔が隠れるくらいの資料の山を運ぶのは苦ではなかった。  周りからは生徒会長自ら雑用なんてしなくて良いと言われているが彼女の日課は変わらなかった。  今日は各部活の予算案を職員室まで運んできたところだった。 「明山さん今日も頑張るわねえ」  教頭の谷口先生がゆうに声をかけた、ゆうはそんな事ないですよと軽く会釈しながら答えた。  谷口先生のことを厳しいと悪く言う生徒も多いがゆうは憧れていた。谷口先生は確かに校則に厳しすぎる面もあるかもしれないが六十歳近いのに背筋が伸びていていつも凛としている、同じ女性としてゆうの憧れだった。  今日はいつも教頭の席についている彼女が今日は入口近くの面談用の椅子に座っていた。  そして目の前には一つ下の二年生の校章をつけている男子が座っていた。彼はゆうの方を見ると興味なさげにすぐに目をそらした。  ゆうは彼のことを知っている、以前三年生と殴り合いの喧嘩を起こしたことのある問題児だ。  確か名前は、 「さて、叶ひかるくんあなたの言いたいことはわかりました。要するに休んだ分の課題をやる代わりに単位が欲しい、そうですね?」  そう叶、叶ひかる。ゆうは思い出した。  確か最近は学校に来ておらず、外で深夜まで遊んでいるともっぱらの噂だ。 「はい、お願いします」  そう一人呟くようにひかるは言った。  しかし厳格な谷口先生が課題で単位の免除などするはずがないとゆうは思った。  谷口先生はひかるの目をじっと見つめた。 「わかりました、課題で単位の件は免除しましょう」 「え」  うっかりゆうは声が出てしまった。今まで谷口先生がそんなことを許す人ではないと思っていたからゆうは面食らった。それに相手は問題児の叶ひかるだからなおさらだ。  谷口先生とひかる、二人の視線がゆうに向けられた。 「すみません、なんでもないです」  資料を職員室に置いてゆうは足早にその場を去った。  
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