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昼食は、普段使われていない階段の踊り場で食べるのが恒例になっていた。
段々と陽射しが強くなって、暑さを感じ始める。
「そろそろ違う場所探さないとダメだね」
と言う琴美に、
「教室で食べればいいのに」と返すと、
「ダメだよそんなの秘密の話できないじゃん」と朝陽が反論した。
「秘密の話なんてした事ないじゃん」笑って返す。
「玲奈はわかってないなあ。琴美、このわからず屋に言っておやりなさい」
「なによ?」と私が訊く。
数秒の間を置いて、おもむろに琴美が口を開いた。
「三人の方が楽しいじゃーん」
「なにそれ。たっぷり間を取って言うこと?」
琴美に言ってから、朝陽を見遣ると満足そうに頷いていた。
「ねえ、合ってるの? いま琴美に言わせたかったこと合ってる?」
「合ってはいないけど、正解を出してくれた事に余は満足じゃ」
朝陽がふざけて言うと、「ははーっ」と琴美が平伏した。
「誰役と誰役なのよ、二人共。そして私は何役をすれば良いのかだけ教えてください」
二人が笑う。
「君はそのままで良いのだよ」
なによそれ、と私も笑った。
「ねえ玲奈、一つ訊いてもいい?」
朝陽が唐突に話題を変えた。
いつものふざけた声音とは違い、真面目さが滲み出ていた。
「どうしたの?」
なるべく平静を保ちながら訊いた。
朝陽と琴美の視線が交差したことで、二人からの質問なのだとわかる。
「玲奈ってもしかして、地毛は金髪なんじゃない?」
そうだよ、とすぐには言えなかった。
嘘を見破られた時のようなバツの悪さが私を襲った。
騙しているつもりはなかったのに、結果的にそうなってしまったことが歯痒い。
「うん、染めてるの」
「どうして? 確か、染めるのは校則違反だけど地毛なら染める必要ないんじゃないの?」琴美が訊く。
「目立つから」短く答える。
「えーもったいないー。金髪って憧れなのにー」朝陽が誰に言うでもなく呟いた。
「そんないいものじゃないよ、目立つだけで。中学の頃だって……」
二人にそのことを話したのは、私の気持ちを知ってほしかったからとかではなく、これ以上、詮索されたくなかったからだ。
なのに、二人は自分のことのように、怒りを露わにした。
朝陽はともかく、琴美が怒っているのを初めて見た。
「そんなのダメだよ。生まれたままの姿で生きていけないなんて」
「生まれたままの姿だと裸だけどね」
と一応訂正しておいたけど、琴美は聞く耳を持たなかった。
「よし、じゃあ相談しにいこう」朝陽が立ち上がる。
「誰によ?」私も訊きながら立ち上がった。
「さっちゃんに決まってるでしょ」
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