こんな所おさらばしてやるぜ!

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アルトたんは、一度洗礼を受け従者のジョブを持っていた他、今回参拝したことにより戦闘職の拳闘士、生産職の料理人が追加されたらしい。 経験により後からジョブが増えるのは珍しくはないんだって。それでも僕のジョブは多いらしく、『さすが神に等しきお方』と感動された。 いつのまにそんな大層な位置になったの…。僕より廃人プレイしている人とかに会ったら失神しないかな。 今回家に帰す子は1人を除いた普人の子だけ。 (ちなみに僕みたいな人種を普人族、それ以外を亜人族という。) 亜人の子は全残り。どうやら奴隷狩りの被害に遭いやすいため、とくに獣人の子は育児放棄されることが多いとのこと。 レオニールのところに来た時点で親を知らない子ばかりらしい。 …ぼぉくがっ、立派にしょだてるかるぁねぇええ(号泣) と涙も鼻水も流しながら泣いた。そんな時もサッとハンカチで拭いてくれたマイエンジェルも大事にします。キリッ。 一夜にして子沢山。気を引き締めないと! そんなこんなで洞窟タイプのダンジョンにいます。 ゴブリンなどの人型はまだ心の準備ができていないので、スライムや植物系のモンスがメインのところを選びました。 できるだけ皆をLV5まで育てたら脱出するよ! 「ていっていっ」 「やぁ!」 「それー!」 ショタっ子達の可愛らしい声の合唱。ひゃわわーん!カワユ!! モンスとはいえ、植物タイプで動けない…見た目は少し背の低いヒマワリである。 それを可愛いショタっ子達がペンペンと一生懸命に殴っているなんて可愛い以外の感想がない。 倒した時の『キシィイ!』という断末魔は可愛くないけど。 おっと、皆の育成にも目を光らせないと。 戦闘職があるのは、亜人の子達と、エルクくんを除く普人の子達。 エルクくんは薬師という生産職だったけど、回復師がいない地方の村ではとても喜ばれるジョブらしい。 生産職とはいえバカにできない。調合で作った爆薬が役に立つ。実際、レベルが一番早く上がっているのはエルクくんなのである。 他に魔術師や応急師、狩人のジョブを持っている子は教えれるけど、剣士やアルトたんの拳闘士は門外漢なので、地道に頑張るしかない…。お金いっぱいあるから、冒険者ギルドとかで先生雇ってみようかなぁ。 「さぁ、ラッシュくん。あのスライムに向かって成功するまで武技を放って!」 「はい!ママ!」 「せめてパパって呼んでねっ」 先にお別れする子たちから優先して教える。 出会ってばかりの頃の怖がっている姿はもう見えない。こういう世界のせいか、戦闘に尻込みする子は意外とおらず、真面目に戦っている。 「ママー。爆薬なくなったぁ」 「パパですよー。ん、エルクくんはもうLV5になってるね。じゃあ皆のサポートに回ってくれるかな」 お別れ組もこの数日間で懐いてくれたのか、僕を親として接してくれている。でも何故かママと呼ばれるんだけど…。この世界ではご飯を作る人は母親なのが普通だからかな? よし、今日中に目標達成しそうだな。明日には越境できそう。 ひまわり組もそろそろ動く敵の練習させようかな。 「スレイブチェイン!」 奴隷商のスキルは意外と役に立つ。 隷属魔法は人だけではなく、モンスにも効果があるので、こうしてスライムを奴隷化させて攻撃しないよう指示をし、子供達に安全なレベル上げと動きの練習をさせることができる。 「それー!」 一番元気なアレンくんが突撃していく。ピクピク動くライオンの耳と尻尾が可愛い。 「ふぁいあぼー!」 おませなユーシュカくんが舌ったらずな声で魔法を放つ。それでもエルフという種族の恩恵なのかちゃんと発動している。可愛い。 「…」 唯一普人メンバーの中で孤児のリンカくん。無口だから引っ込み思案かと思っていたけど、皆の隙間をぬってちゃんと当てにいっている。褒めると返事は無くとも、照れながらはにかむ。可愛い。 小さい子ってこんなに癒されるんだ…。もしかしてレオニールの感情に引っ張られてショタコンになってる!? ダメダメ!ノータッチショタ!! スライムも可愛いけど、この子達のために糧となってくれ…なむー。 あ。今ので奴隷商のレベルが12になった。 レオニールの体が16歳のせいもあるんだろうけど、思いの外レベルが低い! 「ん。何かスキル増えたっぽい」 「おめでとうございます。どんなスキルか聞いてもいいですか?」 「いいよー。えーっと…『チャーム』?なにこれ、魅了ってこと?」 「そうですね。自分よりレベルの低い相手を魅了するパッシブスキルです。でもオンオフの切り替えができるみたいなので、普段はオフにした方がいいと思います」 ほー!もしかしてモテモテになるチャンスあるかも?…でも洗脳みたいなものだから使う度胸はないなぁ。ハァ。 「ちなみにモンスターがいる場所では…」 「ママ!何か怖いの来る!!」 パパだってば!と突っ込む前に、洞窟内がビリビリするような咆哮が反響した。 思わず身がすくむ。ちびっこ達の中にはヒェーンと泣き出す子もいる。 ズシン…という小さめの地響きと共に奥からにゅっとむき出しになってきた2体のシルエット。 「ミノタウルス!」 な、なんだってー!?何でLV1の階層でLV15のモンスが出てくんの!しかも2匹!! 「アワアワ…皆にバフかけないと」 えーっと、防御アップ!回避アップ!スピードアップ!! 「まずい…!ラム様すぐにチャームを切ってください!!」 「先に皆を回避させないと!僕が一番レベル高いし、攻撃食らっても一撃では死なないから大丈夫!」 「そうではありませんっ!チャームの効果は…わっ」 足止めをしようとしたのか、アルトたんがミノタウルスの前に立ちふさがった。が、そのミノタウルスは牽制程度に棍棒を振っただけだった。 …あれっ。子供達に見向きもせずにこちらへ突撃してくる。やばっ!迎撃しないと! 「ファイヤーボール!…あっあれ!?ファイヤーボール!ファイヤーボール!!」 ぐあああ!そういえば魔術師育ててないからまだLV12だった!!ダメージは与えられているんだろうけど致命傷にはなっておらず、スピードが落ちることなく突進してくる。 吟遊詩人の弓装備に変更しないとっ!と構えた頃には目の前まで来ていて、弓を弾かれてしまった。 生のミノタウルスの迫力に押し負けそうである。…というか、なんか…ゲームと雰囲気が違う? 判断の遅れが体を硬直させてしまった。 その隙を見逃してくれるわけもなく、ミノタウルスの爪が振り落とされた。
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