「君は過激派」「僕のアンチ」2曲続けてどうぞ

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明日の朝はできるだけ早く出られるよう、今やれる準備は終わった。 朝食は馬車の中で摂れるものにした。 部屋に戻ると、サイドテーブルの光がじんわり滲んで、アルトたんの影が大きく伸びていた。 「あれ、まだ起きてたんだ」 「主人より先に寝るなんてできません」 真面目だなぁ。でもそこが天使っ! 「馬車の操縦は任せっきりになるんだから、そんなの気にせず休んで良かったのに」 これには返事が無かったが、顔を見ると拒否!と言っているのがありありとわかった。 良い子だなぁ。何でレオニールなんかに忠誠を誓っているんだろう。もったいない。 「あのさ…、越境できたらアルトたんは…」 「僕はずっとラム様の側にいます」 「…。でも僕は本当のレオニールじゃない。君が忠誠を誓った主人じゃないんだ。それにあのクズに戻ったとしたら…アルトたんは酷い目に合うんだよ」 「僕はレオニール様に忠誠を誓っていたわけではありません」 何を言っているんだろう。ゲームのアルトたんとは別物って言いたいのかな。 「ラム様に話を聞いた時、僕は納得していました。…貴方と出会う前なら、その運命を辿っていたんだろうなぁ、と」 「え?」 「面白い話題ではないですが…僕の生まれについて話してもいいですか」 静かにポツポツと、ゲームでは知ることが無かったアルトたんの過去を話してくれた。 「元々僕は、レオニール様のご両親が所有する奴隷が生んだ子でした。物心ついた頃に認識した僕の世界は、傍若無人に奴隷をモノ扱いする主人、虐げられる奴隷たち…人形のような目をして光の無い母しかいませんでした。それが当たり前で僕も希望なんて言葉を知らなかった。それは僕の所有がレオニール様のご両親からレオニール様に変わっても変わりません。ただ住む場所が変わっただけ。…レオニール様に忠誠を誓っていたわけではなく、そんな世界しか知らなかったので逃げるという選択が思いつかなかったんです。そもそも逃げる場所もありませんでしたしね。僕は道具でしたから」 「…」 「でも僕は道具なんかじゃ無かった。僕を…ヒトだと教えてくれたのは貴方です。ラム様」 なんてことだろう。 僕はどこかでゲームだから、と思っていたのかもしれない。僕が見たストーリーだけじゃなく、ちゃんと今までの人生を歩んで来たヒトだったのに。 アルトたんだけじゃない。 この子達に『早く逃げて』なんて言葉は無遠慮でただ困惑させるだけだったのかな。 「すみません。僕の言葉が拙いばかりにそんな顔をさせてしまいました」 「う"っ、ぶえ"っ!…ア"ル"ドだん"悪ぐな"い"も"ん"!!」 僕の実年齢からすると、アルトたんとは一回り以上違うのに情けない。 涙腺…あと鼻水がダバダバ流れているせいでより恥ずかしい姿を見られている。 25歳は大人だから、頼り甲斐があってもっとしっかりしていると思った? ざーんねん。これが25歳だよ☆僕も歳を重ねれば、ちゃんとした大人になると思っていた時期もありましたよ。 人間力って自分で磨こうとしないと子供のままなんだね。 僕ももっと努力していればよかった。 そうすれば、こんなに苦しい目にあっている子供達を抱きしめてヨシヨシする甲斐性はあったのに。 そう。僕を抱きしめてヨシヨシしてくれるアルトたんみたいに…。 天使なうえに、性格男前…。 「僕は貴方と出会ってから、毎日が新しいことで埋め尽くされています。街の外に出ることと、ダンジョンでモンスターを倒すことも、美味しい食事も、仲間の奴隷達の笑顔も。…僕は今、これが幸せなんだと初めて知ることができたんです」 「うっうっ…こんなの当たり前のことなんだよ。もっともっとすごい幸せなことあるよ」 「それでは、その『もっとすごい幸せ』をラム様の横で見れる権利を僕にください」 「権利なんてもの最初からないよ、君はもう自由なんだから!一緒に居てくれるなら僕も心強いし…」 なんかプロポーズみたいな言葉になってるよ、アルトたん。怖ろしい12歳だよ。 レオニールのメンタルに汚染されているのか、少しトゥンクしちゃった。 毎日磨いているおかげで、圧倒的美少年へと進化したアルトたんが超神聖的天使スマイルで僕の眼球を潰してくる。ああ、生きているだけで尊い。 「僕、早く強くなりますね!」 「へ?」 「ラム様のお知り合いのお二方、苦手なんでしょう?それでも僕達の安全のために、ラム様は我慢して同行をお願いしたんですよね」 はわわ。あの2人にビビっているのバレてるーー! 「なので僕も早く強くなって、皆を守れるようになります!そして、あの間男達を追い出してみせます!!」 間男なんて難しい言葉知ってるんだね!すごーい! でもやっぱり12歳のせいか、使い方間違ってる。可愛いなぁ。 12歳の一生懸命な背伸びにほっこりした。 僕ももっと頑張って皆を守れるようになるね。 「では改めまして…今度からもよろしくね!」 「はいっ」
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