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バシュッ、バシュッ。
しばらく弓をひく音だけが続いている。
「おーいラム。今日中に越境すんじゃねーの?」
「するよ。でもこの蜘蛛素材の糸はしばらく手に入らないからここで必要分揃えたいの」
「…お前は虫系のモンスター苦手じゃなかったのか」
あれ?クライブさん何で知ってるんだろう。ハナビシさんに聞いたのかな。
でもその通り。ゲーム内でもリアルに作られていたから、虫系のモンスターは超絶苦手である。
男でも虫嫌いって結構いるからね!
それでもやらなきゃいけない時もある。
たとえゲームの時では体験することのなかったリアル解体をしなきゃいけないとしても!
…ううっ。この蜘蛛卵あるよぉ。気持ち悪い。
もちろんSAN値が減少するデメリットだけであれば、すでに心は折れていた。でもリアル解体はスキルのおかげで100点満点に近い解体ができる。つまり、ゲームとは違いランダムではなく確実に素材が手に入るのだ!
「ヨヨヨヨーシ。これで糸は十分だぞぉ」
「ラム様、顔が紫色になってます。越境するまで馬車の中でお休みください」
アルトたんが心配して背中を支えながら、僕を馬車へ誘導してくれる。
僕は大丈夫だ。やり遂げたぞ!でも次からは金の力で虫系の素材は集めるぞ!
「これで子供達の装備が作れる!!」
「あ?そのために死にそうな顔して蜘蛛狩りしてたのか?別にこの辺なら今の装備でも十分だぞ」
ばかめ!!十分なわけない!!
よく見ろ!この紅玉のような美ショタ達が身につけているものを!!
「だって可愛くないもん!!」
25歳派遣社員。男。ついついラムの時と同じロールかまして『もん』とか言っちゃいます。
「おい。そんなことのために足止めくらっていたのか」
そんなこと!?
重要だ!リアルなおかげで、装備作るのも自由度が高いんだぞ!?
ゲームでは装備レベルとかあったから、いきなり良いもので身を固めることはできなかったけど、ここではそんなものはない!
でもサイズは本人に合わせて作らなければならないけど…。(アルトたんが言うにはアクセサリータイプのマジックアイテムであれば装備した人のサイズにフィットするらしい)
「だって…ラッシュくんとエルクくんはもうすぐお別れなんだもん…。お揃いの装備作ってあげたい…」
ラム(女の子)という渾身の推しがいなくなった今、創作のパッションは可愛い子供達に注ぎたい。
いや、たとえこの体が僕のラムだったとしても…可愛い子供達に僕の作品を纏ってほしい!ハァハァ!!
ハァ…ッ!?ショタコンじゃないよ!!まだ大丈夫!!
「おいこら陰険!ラム泣かすな!!」
泣いてはおらぬ。ぶりっ子はしているけどな!…なんとなく気付いたけど、クライブさんって突っかかってくる割に、ショボンって顔するとそれ以上強くは言ってこないんだよね。
「フン。相変わらず性悪女みたいな奴だな」
…捨て台詞は言うけどね。
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