知らない天井だ

2/5
295人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
悲報。夢ジャナイ。 リアルもクソだけど、こんなわけわからんところにもいたくないよぉ。お家帰してぇ。 「レオニール様…どこかお加減が悪いんですか?」 黒うさ耳のぴょん吉くん(あだ名)がいまだ心配そうにこちらを見ている。 それにしてもレオニールという名前に聞き覚えがある。 「そのレオニールって僕のこと?」 「え、『僕』?はっ…はい。あなたはレオニール様、そして僕はレオニール様が所持している奴隷のアルトです」 「うっそ」 一瞬で顔が青褪める。 聞き覚えがあるもなにも、カオスチェインの敵キャラ…しかもドS・ショタコン・変態・ナルシストキャラの成金奴隷商と同じ名前じゃん! じゃあ、さっきから顔を覆って邪魔だと思っていたコレ、もしかしてセンスが死滅しているレオニールの仮面かっ! そして、この子がアルト。言われないと全く分からない。何故ならその名前のキャラ、ゲーム内ではレオニールお気に入りの奴隷のせいで念入りに虐められ、眼球、声帯、耳を切り落とされ、包帯と拘束具を着けられている設定なのだ。虐めの範疇超えとるで! しかもそこまでされてなお、こんなクソ野郎に忠誠を誓っていて、レオニール庇って死んじゃうんだよ…。健気すぎる。 その健気さに女子人気が高かったけど、僕も大好きで涙ながらにストーリー進めたよ。 「アルトたん…喋ってるぅう。耳も切られてない…お目目も潰されてないぃいい」 「えええ!?僕、何か粗相をしました!?」 ビックゥ!と耳まで立てながら後ずさりをしているアルトたん。わーん。生きてるぅ。こんな耳をしてたんだねぇーー。 少しビビられていたみたいだけど、涙どころか鼻水までダバダバ出てしまった僕に戸惑いながらタオルを差し出してくれた。優しい…。 ブビーー!と鼻水ごと涙を拭いた。 仮面の上から拭いたせいでその無機質な存在で自分が何なのか思い出す。 「じゃあ僕って、ど変態ショタコンのクソダサ成金奴隷商レオニールなの?」 「ん"!?」 「ショタやプレーヤーに胸糞悪い悪逆重ねた短小クソ野郎(予想)のレオニール?手間かけさせた割に最後は漏らしながらアッサリ死んじゃうクソチビレオニール?」 「…仰ってる意味が分かりませんが、あなたは奴隷商のレオニール様です」 「ウワァアアアアアン!死にたくないよぉ〜!」 「お気を確かに!」 悪口しか出てこないのも仕方ない。敵役でも最低に胸糞系だったんだ。あのクールな世界観がカッコよくて始めたゲームだったけど、レオニールだけは好きになれなかった。カール姉さんの推しキャラもコイツに殺されたようなもんだし。 他の敵役はカッコいいキャラ多いのに…。 「泣かないで。僕で良ければ何でもお話してください」 ブワッ!なんて包容力!めっちゃ良い子じゃん!!なんであんなに虐めたんだよぉ!
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!