知らない天井だ

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「なんっじゃこりゃあ…」 もうね、他に言いようがない。衛生面でも綺麗な日本で生きてきた僕には、それぐらい酷い状況に思えた。 地下室なんてもんじゃない。地下牢みたいな空間に、アルトたんより小さい子達が震えながらこっちを見ているが、皆一様に薄汚れていて痩せ細っている。 「アアアアルトたん!小さい子達が閉じ込められてるよ!出してあげて!こんなん児童虐待で捕まっちゃう!」 「誰にですか?じゃなくて、でもラム様…そんなことしたらレオニール様の商品が…」 「今は俺がレオニールなのぉーー!チミッ子達可哀想だよぉ!早くしないと泣いちゃう!僕が!!」 「………もう泣いてらっしゃいます」 うるさいよ!小心者なんだよ!こんな状況、僕の心が耐えられないの! 鍵で鉄格子を開錠されてもチミッ子達は戸惑った顔をして出てこない。 「どうしたの?出ないの?」 「たぶん戸惑っているんだと思いまs」 「あっ!この子怪我してる!コッチも!!この世界ならポーションとかあるんでしょ。ちょーだい?」 「…。残念ながら低級マナポーションならありますが、その他のポーションは昨日大口顧客の方にサービスで付けていらっしゃったので在庫はありません」 「もう…売られてしまった子がいた、の…?」 「大丈夫ですよ。レオニール様が今までお売りになられたのは犯罪奴隷だけです」 たしか契約奴隷という普通の奴隷と、捕まった悪い奴がなる犯罪奴隷という二種類がいるんだっけ…。ゲームでは、未成年は犯罪奴隷にできないって設定だったから、この世界でも反映されているはず。それは奴隷に人権のないこの国でも変わらない。 つまり、変態に売られたりとかクソ野郎に潰された可哀想な子はまだいない…? 「よよよよよかったー!」 力が抜けて腰からへたりこんでしまう。 そんな僕にアルトたんは駆け寄って心配してくれる。まじ天使。 「…あ、ポーション無いなら回復魔法使える人とか知ってる?怪我してる子治したい」 「はい。あっ…その、レオニール様が…」 「えっ変態のくせに使えんの?」 ゲームの戦闘では、隷属魔法で従えた奴隷や魔獣を従えて代わりに戦わせるスタイルだったから知らなかった。 てか、スキル何持ってるんだろ。この体はレオニールだからラムで育てていた職業はリセットされているのかな?ほぼ、生産系しか育ててないけどさ。 ステータス確認したいけどゲーム仕様の機能なんてないよね…。ステータス見たいなー! と思った瞬間、目の前に見覚えのある画面が現れた。 name:レオニール・ラム age:16 job:☆奴隷商○吟遊詩人○識者○魔術師○プリースト*錬金術師*サウザンドアームズ*グランクチュリエ*グランシェフ*グリームサム*フォアマン unique skill:(省略) skill:(省略) 出た…。なんか普通に出た…。 「へぁ!?レオニール16歳!?若っ!ゲームでは22歳設定だったのに!え。つまりなに。この世界はゲームの舞台より…1、2、3…6年も前なの?」 「レオ…ラム様、どこを見ていらっしゃるんですか?何かあるんでしょうか」 およ。この画面は僕にしか見えないの? アルトたんの手をひき、画面を指差して尋ねると、小さい驚きの声をあげた。 「なん、ですかこれは。急に…あ、ラム様が手を離すと見えなくなりますね」 なるほど。セキュリティ機能みたいな感じになってるのかな。 僕が許可をして触れている間は見れるようだ。またアルトたんの手に触れようとしたら今度は退かれた。 「あの…ラム様のお手が汚れてしまいます」 レオニールのせいで嫌われたのかと思ったけど、そんなこと気にしてきたんだ。 お茶とか入れてくれたりするためか、アルトたんの手は綺麗に見える。そこまで気にしなくても…。 「大丈夫だよ。あとで皆で一緒にお風呂入ろうね」 「はい…は?」 固まっているアルトたんには気付かず、またステータス画面?を今度はしっかりと確認する。 ラムで育てていたジョブが残っていて良かった!これなら奴隷商以外でも子供達を養えそう。 ジョブは上位職になると、カタカナ表記になる。そして、戦闘職から順にレベルが高い物が先に表記されている。 つまり、僕は生産職は錬金以外上位職。逆に戦闘職は基本のままそこそこ。…奴隷商ってジョブなんだね。ゲームには無かったジョブだからユニークジョブとか?これだけマーク違うし。 あっ、よく見るとレオニールのくせに上位の回復師じゃん!育ててはなさそうだけど。 スキルチェックしてみよ。…ふむ。さすがプリーストなだけあって範囲回復持ってる。 「よし!子供達の怪我を一気に治せるね!」 プリーストの杖は無いけど、軽傷程度だからいけると思う! 「エリアヒール!」 ゲームと同じ感覚で唱えると回復魔法が発動するのを感じた。が、一気に疲労感が遅い膝をつく。 え…どういうこと。疲労感の割に怪我が治った感じもしない。 「ラム様っ」 アルトたんが駆け寄って背中に手を添えてくれた。 「なぜそんな高位魔法を…。レオニール様は普通のヒールしか使われませんよ」 なん、だと。範囲回復の熟練度を確認するとLV.0。つまり上位職にジョブチェンジした際に取得しただけで、一度も使ってないの!? レオニールめぇええ!所詮レオニールか! 「アルトたん…。低級マナポーションはあるんだよね。なら、それをありったけ持ってきて…」 「え。わ、わかりました」 万が一の時、単体のヒールだけじゃ間に合わないことがあるかもしれない。 これ以上子供達に負担をかけてはいけない。軽傷のうちに範囲回復をマスターする! そして20分後。 「エリアヒール!」 「…!成功しました!完璧です」 ようやく確実に成功するようになった。 床にはマナポーションの瓶がたくさん転がっている。うー…。お腹タプンタプンだよぉ。
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