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<7>
派手な音を立ててドアが開く。
ニャァァァ!
唸り声を上げ、怒気をはらんだ数匹の猫たちが部屋に雪崩れ込んでくるのとそれは同時だった。
ボォン!
「ぐっ……ッッッ! おのれ、煙か、、、」
「ボスっっっ! 目が、目が痛い!」
「落ち着け! 皆、一旦外へ出よ!」
三毛猫の叫び声に、雪崩れ込んできた猫たちが一斉に踵を返す。
飛び込んできたばかりの建物から逃げ出すのに、そう時間はかからなかった。
「ボス、あいつは……時間屋は」
「大罪人じゃ。人間に寿命がないと嘘をついて、殺しておきながら善人を装っておった」
煙玉の花火か何かか。
獣の習性で炎を怖がり、煙で目をやられた猫たちが蹲っている。
「冥府から連絡は受けていた。事故や病気で死んだ人間の余命が、本来あるべき数字と合わなかったのじゃ」
寿命遺産の贈与手続き中、不審な事例が相次いでいた。
浮かび上がったのは、中抜きをしている不届き者の疑惑。
「金を時間に、時間を金に変えるという……時間屋。実在していたなんて」
「冥府に連絡を。即刻援軍を送ってもらわねばならん」
金と、時間。
人間にとって、それはどちらも大切なものだ。
だからこそ、おいそれと取引などさせてはならない。
それはこの世の理を歪めてしまうから。
「---あやつは必ず、ワシらで捕える」
冥府の官吏を務める三毛猫は、まん丸い金の瞳に強い決意を滾らせた。
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