フデ五

　あの日、当時の使用人と私の関係はまだ主従関係ではなかった。
　私は縁結びの神に捧げられる供物として存在し、使用人は私を運ぶ役＿＿＿おそらく神官だった。
　賽銭箱と言われる箱に私を投げ入れるという大役を背負わされた当時の使用人は緊張していたのか、大勢が見守る中盛大に失敗した。投げられた私は賽銭箱の枠に衝突し、そのままはじかれて近くにいた女人の手にすっぽりと収まったのだ。手の内から見上げた女人は驚きつつもクスクスと笑っており、使用人は恥ずかしさから顔を真っ赤にしていた。
　それからだったろうか。彼らは次第に愛し合うようになっていった。使用人は女人をとても愛していたし、女人の方も使用人を愛した。
　彼らが結婚してから、使用人は私にこう言った。
「僕と彼女を出会わせてくれてありがとう」
　私と縁結びの神は知らぬ間に仕事をしていたようだった。それからというもの、使用人は私をひどく大切に扱うようになった。
　私自身、使用人と女人を引き合わせたことを誇りに思うようになったのだ。