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「いやぁ、松田くんね?困るんだよ、遅刻とか。ちゃんと仕事としての自覚を持ってもらわないとさ」
店長のネチネチした声を受け、俺は更に肩を狭める。
俺はこの日コンビニのバイトを遅刻した。
お宝動画を全部録画し終えて我に帰ると、すでにシフトの時間は過ぎていた。
「ねぇ、聞いてる?てか舐めてんの?よりによってこんな忙しい日に一時間も遅れてくるとかさぁ」
「すみませんでした!」
バックヤードに響き渡る俺の声は、レジ打ちしているパートのおばさんにも聞こえてたんだろう。
おばさんはチラッとこちらに目を向けて、すぐに何も見なかった素振りでレジ対応に戻った。
「ッチ、これだから学生バイトは嫌なんだよ。ほら、もうレジ行って。お客様きてるから」
手を払い乱雑に俺を追い出す店長は、最後にもう一度舌打ちをして在庫確認に戻っていった。
たしかに遅刻をしたのは俺だし怒られるのも当然だけど、流石にあの態度は酷いんじゃないか。
今まで俺は誰よりも真面目に勤め上げてきたんだから、多少大目に見てくれてもいいのに。
「はぁ」
これだけ嫌な思いをしてもバイトは辞められない。
全てはゲームのため。
来月に俺が欲しいタイトルが3本発売される予定だ。少なくともその資金を貯めるまではバイトを辞められない。
溜息をひとつだけついて俺はレジに出た。
さぁ頑張ろう、ゲームのために。
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