7/20(土)

1/1
前へ
/9ページ
次へ

7/20(土)

■■■ 7/20(土)  男性が来るようになって2ヶ月が経った。驚くことに少しづつお客が増えてきていた。前のようにダラダラとする機会が減ったのは残念だけど、好きなケーキ作りができるようになったのは嬉しいし、来るお客さんがそれで喜んでくれるのは更に嬉しい。お客さんと気楽に関われるのも個人カフェの良いところだよね。  今の収入だとギリギリ赤字にならないくらいの収支になっているので、もう店を畳むという事を考えなくてよくなったのは大きな変化だ。そのせいで、手伝いをしてくれる人がいないと大変になってきた。ただ手伝ってくれるだけではなく、私のお店のコンセプトを理解してくれる人でないと困る。ふと頭に浮かぶのは今日も朝から居座っている男性だ。他のお客とも結構話していて最早常連中の常連と化している。それに人がいない時にはラテアート等をしているので、スキルは0でなく家は近所というまさに私の求める人物となっている。難点は会社員なので規約とか休日にまで働きたくないという気持ちの可能性だけど、これについては聞いてみないと分からない。考えていても仕方がないので、男性に営業時間が終わったから少し話がしたいと伝えた。 「どうしました?」 「嬉しい事ではあるのですが、最近来店される人が増えてきまして。」 「そうですね、人が少ない時も良かったですけど色々な人に会えるのもいいですよね。」 「会社勤めの人には無理かなと思っているのですけど、よろしければお手伝いをして頂けないかと思いまして…。」 「それは願ったりかなったりですね。」 「…ぇ?あの、会社の規約とか大丈夫なの…?それに連休で自分の好きな事されてるよね?」 「会社勤めならそうなんですが…。前から会社辞めようかと思ってまして、とはいえお金の不安もある為、踏み切れていなかったので今の話はありがたいです。」  詳しく聞いていくと、小説投稿を前からしていて出版も数冊しているけれどそれだけでは生活ができるわけでもない。会社は給料はいいけど拘束される時間が長いのでできればバイトがいいけど、どうでもいいバイトならばこのままのがいいと思っていたらしい。そんな最中私からの依頼は渡りに船らしい。集中する時間も欲しいので週三くらいでという話だったけれど、バイト以外の日も来るつもりらしい。気に入ってくれるのは嬉しいけれどストレスにならないのかという心配はある。 「じゃあ、退職届叩きつけてくるのでそれなりに入るのは9月くらいからでいいですよね。それまでも休日は手伝いますので。」  どんなに頑張っても一ヶ月は必要だろうからそれはしょうがない。というか、退職の話をそれでまとめられるのだろうか…。転職するわけでなければ多少無茶ができるという現実はあるけれど。  どんな小説を書いているかは教えてくれなかった。知り合いに口出しされるの嫌な人もいるかもしれないからしょうがないけれど。  そんな話をしてから夕食は私のおごりで一緒に食べた。料理はお願いしてみたけど手慣れていたので、表だけでなく裏でも結構やってくれそうな感じで助かりそうだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加