5/11(土)

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5/11(土)

■■■ 5/11(土)  翌日、朝食を作っていると窓の外に昨日の男性がいたので驚いた。昨日常連になって欲しいと思ったけれどさ、まだ7時ですよ…。モーニングをやっている店舗なら開店しているかもしれないけれど、私の店は従業員なんていないのでモーニングはやっていない。二階を自宅にして住み込みで働いているので食事は調理場を使用している。食後二階に戻るのが面倒だったから着替えてから食事を作るようにしておいて良かった。  にこやかに手を振っているので、取りあえず中に入れるとする。変な噂立っても嫌だし。…噂立つ以前に人来てないけどね。 「おはようございます!」 「…おはようございます。ウチ店はモーニングしてないのでまだ開店前なんですけど。」 「やっぱりそうですか…。」  しょんぼりしだす男性。しょうがないので、私の朝食と同じものを出すがお金を取る事と開店まではだらけても見て見ぬふりをするという事で合意した。昨日メニュー見てるから分かってるはずだけど、結構高めな値段設定しているのに今日も来たのには驚いた。開店当時は高いという苦情が良くきてたので昨日の会計を見てもう来ないと思っていた。昨日追加注文していた事を考えると、結構なお金持ちなのかな?  当然、今後は開店前に来ない事を念押しした。 「朝ごはんも美味しかったですけど、このミートスパゲッティも美味しいですね。」 「ありがとうございます。チーズかけます?」 「あ、使います。」  どうしてこうなった…。私は粉チーズを手渡しながら心中で頭を抱える。  朝は一緒に食べたけれど、今はランチタイム。つまり昼食だ。それをなぜかお客と食べる店主の私…。おかしいよね。  昼に休憩時間を取っていないので、朝食の時についでに軽くつまめる物を作っておくはずだった。それが今日は男性が来るというイレギュラーがあったので忘れていた。  …となればまだ言い分が立つのかもしれないけれど、そんなことはない。開店当初はちゃんと朝に作っていたけれど、人がこない日々が続くともう普通に食べればいいよねと考えしまったのが原因である。作るというのは味を落とさない為に必要な事でもあるのでその判断自体は間違っていないと思っているけれど、習慣として昼食はその場で作るとなってしまったのでこの状況になっている。  男性に昼休憩の存在を聞かれるまで、その事を失念していた。けれどまさか一緒に食べればいいと言われるとは思わなかった。どうせこないので、外に準備中の札をかけて万が一の場合に備えた。朝も食事を一緒にしたせいか今日は結構話しかけてきた。ノートPCに向かっていたので昨日は話しかけるのを控えていたけれど、相手から話しかけてくるのであるならば気にする事もない。私もその方が助かる。  話している中で男性は実はノマドワーカーではなく有名商社の社員である事が分かった。隔週で土曜出勤があるらしく、その振替を金曜日に当ててお気に入りのカフェ探しをしているらしい。どうやら私のお店を気に入ってくれたようだ。もしかしたら暫く出入りするのかも。私の事も話した。自分から話したわけではなく、当然のごとく男性以外のお客が来ないのが気になっていたようで、それを発端に色々と話してしまった。昨日今日と何をしているのか聞いてみたらはにかんだ顔しただけで何も教えてくれなかった。 今日も閉店まで男性はい続けた。
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