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夜が明けると、部員たちは一週間の疲れなど全く感じさせない身軽さでもって、各々目的の地へ飛び出そうとしていた。
「綾原、お前も行くだろ?」日曜日の部員は、声を弾ませて言った。五人のグループで、わざわざ綾原を部屋まで呼びに来たのだ。精一杯やつし込んで、準備は万端である。
だがその時、綾原は練習用のユニフォームに身を包んでいた。唖然とする部員たちの間を抜け、綾原は言った。
「悪いが僕は行かない」
「お前なにする気だよ?」と慌てて問い掛ける部員B。
「僕は練習がしたいんだ」追いかけてくる五人に一瞥もくれず歩いてく綾原。「遊びに行くつもりはない」
「は?」と別の誰かが言う。「お前先週まで出掛けてたじゃねえか」
「仕方なくだよ。本意じゃなかった」
「いいのかよ、日曜は練習せずに外に出る日だぜ? 監督がそう決めてんだぜ?」
すると、綾原は立ち止まり、くるりと向き直った。
「いくら監督が決めたことでも、それは僕のためにはならない。この二か月でよくわかった。きみらこそいいのか、このままで。僕たちは遊ぶためにこの学校に来たんじゃないだろ? あのとき練習しておけばよかったって、後悔する日がくるぞ」
言い終わると、綾原はまた向きを変えて歩き出した。部員たちもさすがに綾原を誘うのは諦めたようだったが、まだ諦めていないこともあった。
「待てよ! じゃあお前の千円くれよ、どうせ使わないだろー!」ある部員がそんなことを言い出す。
背後から来る叫び対し、綾原は見せびらかすように件の千円札を振って応えた。
「これは監督に返すんだ」
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