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当時の部には自由というものが一切なかった。休みもなく、他校との試合やなにかやむをえない事情でもない限り、学園外に出ることはできなかった。部員たちは学園という方舟に閉じ込められ、世間にどんな変化が起ころうとも構うことなく、ただ自らの技術を磨くことだけに集中した。いまも昔も、明上学園の野球部に集うのは全国各地の才能ある選手ばかりだから、そういう生活はある意味宿命でもあるのだが、それ相応の鬱憤が溜まっていくのもまた事実。つまり、部員たちは皆、金と遊びに飢えていたのだ。
彼らの不満は滲みだした油、そこにことの火種を投じたのはいったい誰か、いまでもわからないままだが、いつからか、そしてどこからか、野球部に一大事件を巻き起こす、あの話が持ち込まれたのだ。
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