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ハンモックパラダイス
わたしたちがこの世界のしくみを学んでいるころには、この世界は急激にそのすがたを変えていたのですが、そのころのわたしたちには、この世界の輪郭がどんなにそっけないものでできたものであるかなど、知るよしもありませんでした。
たとえば、わたしたちがちょうど、二本のヤシの木のあいだにハンモックをぶら下げて、その上で海面の月をながめながらうとうとしている時点では、わたしたちはそのハンモックから落ちてしまうことなんて、考えもしなかったのです。
けれども、わたしたちの中のいく人かは、そのハンモックから落ちてしまうでしょうし、その落伍者の中にわたしが入っている確率は、たいして低くないことなどわかりきったことでした。
なぜなら、わたしはどこか頭のはしっこのほうで、ハンモックで寝ている間に、自分がそのハンモックから飛び出す夢を見ていた記憶がかすかに残っているからなのかもしれません。
わたしは、元の世界のゆりかごから落ちてしまった赤んぼうの中のひとりです。ゆりかごから墓場までをうたう文句は、とっくにその実現の可能性を失っていたのです。
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