ハンモックパラダイス

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 それは、ある暑い暑い日のことでした。いつものようにわたしは、ヤシの木の間にかかったハンモックに寝そべって、読書をしていました。暑さと、その次に起こるあまりにも突拍子(とっぴょうし)のない出来事のせいで、わたしはなんの本を読んでいたか忘れてしまいましたが、たしかその本の表紙はそれまでゆりかごと思っていた、金色(こんじき)の布と同じ色をしていた気がします。  それまで、真夏のような青空と大きな白い入道雲(にゅうどうぐも)が広がっていましたが、急に暗雲(あんうん)が空をおおい、大風が吹いて、ちっぽけなハンモックは、サーカスの空中ブランコのように勢いよくゆれはじめたのです。  わたしは、必死になってその金色(こんじき)のハンモックにしがみついていましたが、大風の勢いは増すばかりで、それに加え、大つぶの雨がわたしとハンモックに襲いかかったのでした。  わたしは、その(あらし)の中で、いつのまにか意識を失ってしまい、長い長い夢を見てしまいました。
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