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「それ。誰か、わかっちゃった?」
飛び上がる心臓と共に後ろを振り返る。
キリエが立っていた。月明かりをはじく水面にほのかに照らされて、俺を困ったように見つめている。
「キ、キリエ、これ」
何か知っているのか、という言葉が口から出るより先に、キリエは俺の背後を指差した。
「一番上はコウシロウ君。その下はカズキ君。一番下は、誰かわかんない。けど、多分あの黄金を盗んだ人じゃないかな」
「なに、言ってんだ」
「だって、コウシロウ君もカズキくんも、あの黄金を警察に持っていこう、なんて言ったんだよ?四人の秘密だって言ったばかりなのにね」
そんなことをすらすらと言っているが、俺の耳には半分も内容が入ってこない。でも、この三人を、もしかしたらキリエが……。
「だから、つい叩いちゃった。その辺の岩で。どうしようかなって思っていたら、知らないおじさんが入ってきたから、その人も。でも仕方ないよね。秘密だもん。ばらしちゃダメだからね」
「何してんのか、わかってんのか」
情けないことに、そんなことくらいしか言えなかった。自分でも笑ってしまうくらいに震えている声だ。いっそ笑えればよかったのに、目の前にいるキリエかキリエに似た別人を見つめることしかできなかった。
「秘密を守っただけだよ、私。それっていけないことかな」
間違いない。こいつはキリエの皮を被った何者かだ。きっと宇宙人か何かだ。昼間、俺と並んで釣りをしたあのキリエが、こんなことを……。
「それでね。一つ聞きたいんだけど」
キリエがゆっくり歩いて俺の目の前に立ち、俺を見上げる。
「この秘密、誰かに言う?」
夜の波が岩にぶつかる音が、ザアザアと俺の耳を揺らした。
数日後。
黄金は付近を捜索した警察が発見したようだ。
それだけならよかったのだが、なぜか黄金が見つかった場所の付近は黄色いテープで囲まれ、一般人が立ち入ることができないようになっていた。何も知らされない近所の住民の何人かは、黄色のテープの前で岩場を不思議そうに眺めているのであった。
俺とキリエも並んで立っていた。
「見つかっちゃったね」
「そうだな」
キリエがこちらを見る。楽しそうに。嬉しそうに。
「次は、どんな秘密がいい?」
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