黄金より重い秘密

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 人間、生きていれば秘密の一つや二つを抱えるものだと思う。これを聞いている皆々様にも同意していただけると思うのだが、物には限度という言葉があるように、よもや犯罪級の秘密を持つことになるなんて俺も思ってもみなかった。  それは、生卵を日向に放置していたら温泉卵になりかねない、うだるような猛暑日だった。    明日から夏休みである。  俺からすれば四国遍路よりも苦難の道のりである新学年の一学期というイベントを乗り越えたのだから、その反動は相当なものである。最後のホームルームの終了のチャイムを聞いた瞬間から俺を始めとする遭難者のような顔つきの奴らは気分を高揚させ、挨拶もほどほどにはじけたポップコーンのごとく教室を飛び出す。教師の注意を背中に受けながら俺は数人のクラスメイトを誘い、登校時に隠しておいた釣り道具を引っさげていつもの釣り場に出かける。俺たちのテンションと反比例していつもの穴場がそれほど成果を出さないので、新たな釣り場を求めてクラスメイトと岩場に沿って歩いているときに見つけてしまった。  金のインゴット、というやつを。
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