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宝(金銀財宝)を探して航海に出た男がいた。しかし乗っていた船が嵐で沈没し、彼は南の小さな無人島へ流れ着いた。宝も手に入らず、見知らぬ小島に流され、彼は絶望のあまり死にたくなった。疲労と飢えでぐったりしていた彼は、ヤシの木の根本に座り上を見上げた。大きな椰子の実が数個なっている。登れば取れるかも知れないが、そんな気力も体力も無い。
途方に暮れかけた時、ふと見ると波に漂うヤシの実が見えた。それは上手い具合に砂浜へと流れ着いた。彼はそれを拾い上げ、腰に挿していたナイフで割り開けた。すると中には何故か手紙が入っていた。そこにはこうあった。
「願いを叶えたければ、椰子の木の下を掘れ」
ちょうど船の残骸と一緒に流れ着いた木箱の中にあったシャベルで、彼はヤシの木の下を掘った。きっと宝が眠っているに違いない。宝への期待から、彼の萎んでいた気力が蘇った。ずんずん掘り進み、およそ一メートル半を掘った所で、ついにシャベルが何かに突き当たった。
男はそれを掘り返した。それは椰子の実であった。奇妙に思ったが、彼は再びそれをナイフで割り開けた。中にはまた手紙が入っていた。そこにはこうあった。
「お前の願いを叶えよう」
次の瞬間、彼の頭上から椰子の実が降ってきた。複数の椰子の実が彼の頭頂部にヒットし、彼はそのまま意識を失って、自分が今掘った墓穴の中に倒れ込んて死んだ。
彼の願いは叶えられた。
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